新シリーズ始まる「KAIZEN三四郎が見抜く製造業の真因」~ツクル君と探る「利益を生み出す工場」のつくり方~第1章「生産準備編」第1回

はじめに
工場の問題は、多くの場合、製造現場で見つかります。部品が足りない。図面が分からない。作業が途中で止まる。手直しが出る。納期に間に合わない。
ただし、問題が見つかった場所と、原因がつくられた場所は同じとは限りません。現場で発覚した不足や不明点の中には、製造を始める前に確認できたものもあります。
この連載では、目の前のトラブルを「現場がもっと頑張ればよい」で終わらせません。実際にどこで手が止まり、誰が確認に走り、なぜ同じことが繰り返されるのかを、KAIZEN三四郎とツクル君の対話を通じて一つずつ見ていきます。
難しい改善用語を並べるのではなく、現場で起きていることを現場の言葉で捉え直すシリーズです。
🔳登場人物
・KAIZEN三四郎: 現場改善のプロフェッショナル。経営と現場の両方の視点から、分かりやすく課題解決を導く。
・ツクル君: 中堅製造スタッフ。現場のやりくりや日々の忙しさに追われつつも、改善に前向き。
この連載の全体構成
第1章 生産準備編(第1回~第3回)
製造指示を出してから不足や不明点が見つかる状態を見直し、現場が途中で止まらずに仕事を進められる準備を考えます。
第2章 生産計画編(第4回~第6回)
急ぎ品や予定変更に振り回され、仕掛かりばかりが増える状態を見直します。現場が守れる計画とは何かを考えます。
第3章 自工程完結編(第7回~第9回)
後工程や検査で不良を見つけるのではなく、自分の工程で異常に気づき、次へ流さないための仕組みを考えます。
第4章 コストの見える化編(第10回~第12回)
「忙しいのに利益が残らない」という状態を、加工時間だけでなく、手待ち、段取り替え、手直し、仕掛かりなどの実態から見直します。
生産準備編 第1回 なぜ、急いで作ろうとする工場ほど納期が遅れるのか? ― 加工時間より「止まっている時間」を見る ―
ツクル君三四郎さん、今朝も急ぎの製番で大騒ぎでした。
朝礼で『これを最優先で流せ』と言われて、すぐ
機械に載せようとしたんです。



それで、すぐ加工できたのかい?



それが、配られた図面が最新版か分からなくて、
設計に確認しました。やっと分かったと思ったら、
必要な購入品が一つ入っていなくて……。
機械を空けておけないので、いったん別の仕事に
段取り替えです。



急ぎの製番は、結局どうなった?



午後に部品が入って、また段取りを戻しました。
加工そのものは2時間くらいなのに、丸一日
かかりました。



その2時間をもっと速くする前に、残りの時間に
何が起きていたかを見る必要がありそうだね。


忙しいことと、仕事が前へ進んでいることは違う 「動く」と「働く」の違い
動く → 付随作業
働く → 正味作業(工程が進む・・・付加価値が付く)
急ぎ品が入ると、現場は止まっているようには見えません。別の仕事へ切り替え、材料を運び、工具を替え、担当者へ電話をし、図面を探します。誰も遊んでいません。
それでも、納期を急いでいる仕事そのものは進んでいません。むしろ、途中の仕事が増え、段取り替えが増え、どの仕事も終わりにくくなります。





確かに、機械は動いていても、急ぎ品は止まったままです。



そう。『人や機械が動いている』ことと、
『仕事が完成へ近づいている』ことは別なんだ。
急ぐほど遅れる流れ
準備が整っていない仕事を「とにかく着手」すると、現場では次のような流れが起きます。
・図面、部品、加工条件などの不足が、段取り後に見つかる。
・自工程で不良が見つかり作り直し
・必要な刃具・計測器・治具がない
・加工できない箇所が見つかる
・確認待ちや部品待ちになり、別の仕事へ切り替える。
・途中まで手を付けた仕掛かりが増える。
・優先順位が何度も変わり、段取り替えと運搬が増える。
・急ぎ品だけでなく、もともと予定していた仕事まで遅れる。


つまり、急ぐこと自体が悪いのではありません。準備が整っていない仕事まで急いで流すことで、「待ち」と「やり直し」が増えることが問題です。
その間、急ぎ品は完成へ近づいていなくても、人と機械の時間は使われています。その結果、納期が遅れるだけでなく、残業や仕掛かりが増え、利益も削られます。
問題が起きた場所と、原因がつくられた場所は同じとは限らない



でも、加工ミスや段取りの悪さが原因で遅れる
こともありますよね。
全部、生産準備のせいとは言えないと思います。



その通り。現場の作業方法や設備の状態を直すべき場合もある。だから『原因は必ず現場の外にある』と言うつもりはないよ。」
ただし、現場で問題が見つかったからといって、すぐに現場の
責任と決めつけてはいけない。図面の不明点、部品の不足、
外注戻りの未確認、検査方法の未決定は、作業を始める前に
見つけられた可能性がある。
現場で起きたトラブルを改善するときは、「誰が悪かったか」より先に、次の二つを分けて考える必要があります。
・問題が見つかったのは、どの工程か。
・その問題を、もっと前の段階で見つけたり防いだりできなかったか。
「全部揃うまで待つ」ことが生産準備ではない



でも、全部が完璧に揃うまで待っていたら、
短納期の仕事は間に合いません。現場で判断
しながら進めるしかない仕事もあります。



その意見はもっともだ。生産準備は、何でも完璧になる
まで止めることではない。『この状態なら始めてよい』
という最低条件を決めることなんだ。
少なくとも、使用する図面の内容が確定していること、着手に必要な材料・部品があること、未決事項がある場合は、その判断者と期限が決まっていること。この三つは確認してから着手します。また過去のトラブルを記録しチェックポイントを確認したり、類似製品はその記録からあらかじめQポイント(Q=Quality、品質確保の重要ポイント)を作業者に伝達します。
現場判断をなくすのではありません。現場に渡す前に決められることを先に決め、現場で判断する事項は「何を見て、どこまで判断し、どこから先は相談するか」を明確にします。
最初にやることは、止まった理由を残すこと
改善を始めるとき、最初から大きな仕組みを作る必要はありません。まず1週間、仕事が止まったときに、理由とおおよその時間を残します。
・図面確認待ち
・部品・材料待ち
・加工条件の確認待ち
・外注戻り待ち
・検査方法の確認待ち
・ベテラン判断待ち
・急ぎ品による段取り替え
同じ理由が何度も出てくるなら、それは個人の頑張りではなく、着手前の確認方法で潰すべき候補です。
三四郎の現場チェック
次のうち、実際に起きているものはありませんか。
□ 朝一番で最優先にした仕事が、図面や部品の確認で止まる。
□ 段取りを終えた後に不足品が見つかり、別の仕事へ切り替える。
□ 急ぎ品を入れるたびに、途中までの仕掛かりが増える。
□ 最新図面かどうかを、現場が電話や口頭で確認している。
□ 実加工時間は短いのに、着手から完成まで何日もかかる。
一つでも当てはまる場合、加工をさらに急がせる前に、「着手後に何を待っているか」を確認する余地があります。
三四郎のひとこと
『急げ』で縮むのは、目の前の作業時間だけだ。図面待ち、部品待ち、段取り替え、手直しまで増えたら、仕事全体は遅くなる。
急ぎの仕事ほど、すぐ機械に載せる前に、『最後まで流すために何が足りないか』を一度確認しよう。
次回予告



でも三四郎さん、うちでも材料を集め、工具を揃え、
図面を配っています。それでも準備不足なんでしょうか。



材料や工具を揃えるのは大切な段取りだ。ただ、『最初の
工程を始められる』ことと、『途中で止まらず完成まで進
められる』ことは同じではない。次回は、生産準備で何を
どこまで確認すればよいかを考えよう。


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