プロフェクト(株)メルマガ DXナビゲーション バックナンバー 第47号:利益が残る工場は、なぜ「売上」ではなく「固定費」にメスを入れるのか?(前編)

「売上はそこそこ維持できているのに、なぜか手元に利益が残らない。」
多くの中小製造業の経営者様から、このような切実なお悩みを伺います。
原材料の高騰、エネルギー費の上昇、そして毎年のように上がる最低賃金……。
「やはり、もっと新規案件をガンガン獲得して、売上を伸ばすしかないのか?」 そうお考えになるかもしれません。
しかし、本当に売上を伸ばすことだけが、利益を増やす唯一の道なのでしょうか。
今回は、数多くの町工場を支援してきた経験から見えてきた、「厳しい時代でも確実に利益を残すための、引き算の経営学」についてお話しします。
利益を増やす「二択」の真実
言うまでもなく、利益の構造は非常にシンプルです。
利益 = 売上 - ( 固定費 + 変動費 )
この式からわかる通り、利益を増やすアプローチは次の二択しかありません。
- 収入(売上)を上げる
- 支出(固定費+変動費)を下げる
ここで多くの企業が「1. 売上を上げる」を選択しようとします。しかし、市場環境や顧客の動向に左右される売上は、極論を言えば「他力本願」な側面が強く、自社だけでコントロールすることは極めて困難です。
であれば、私たちが着目すべきは、100%自社の努力でコントロールできる「2. 支出を下げる」以外にありません。

なぜ「変動費」の改善では効果が見えにくいのか?
支出を下げるとなると、まずは「材料の仕入れ値を下げる」「歩留まりを良くして廃棄を減らす」といった【変動費】の削減に目が行きがちです。
もちろんこれらも大切ですが、変動費は「売上の上下(生産量の増減)」によって総額が常に変動します。そのため、 「現場が頑張って材料費を削ってくれたはずなのに、今月は受注が減ったから、本当に改善効果が出ているのかよく分からない……」 という事態に陥りやすいのです。効果が実感できなければ、現場の改善モチベーションも続きません。
だからこそ、利益を残す工場が本当に狙い撃ちにするのは、売上の増減に左右されず毎月確実にのしかかる【固定費】なのです。
そして、製造業の固定費の中でも、最も大きな割合を占めるのが「人件費」です。
ここで、ぜひ考えていただきたいことがあります。
材料を10万円余分に買ってしまったことも、もちろんムダです。
しかし、本当に怖いのは、その材料を使って「今はいらないもの」を作るために、人が何時間も働いていたとしたらどうでしょうか。

材料費のムダだけではありません。そこには、その製品を作るために費やした「人の時間」という、もっと大きなコストが隠れています。
固定費を下げる=「生産性を上げる」の落とし穴
この人件費という最大の固定費をムダなく使うためには、現場の「生産性」を本当の意味で高める必要があります。
しかし、ここに経営者が陥りやすい「最大の罠」があります。
多くの現場では、生産性を【出来高 ÷ 人数】で判断しようとします。
この基準で評価されると、現場はどう動くでしょうか?
「今いる人数で、できるだけ多く作って生産性を高く見せよう!」
こうして、現場は「今すぐ必要のないもの」まで余分に作り始めてしまいます。
一見すると、材料費が余分にかかり、在庫が増えることが問題のように見えます。
しかし、本当の問題はそこだけではありません。
「いらないもの」を作るためにも、当然、人が働いています。
つまり、不要な製品を作るために使った人の時間は、「いるもの」を作るためには使えない時間になってしまうのです。
その結果、本当に必要な仕事が後回しになり、納期に間に合わせるために、今度は残業が発生する。
「いらないものを作るための人件費」と「いるものを作るための残業代」。
こうして、工場は二重に人件費を支払うことになります。

これこそが、「出来高を増やせば生産性が上がる」という考え方に潜む、大きな落とし穴なのです。倉庫に余計な在庫が積み上がることも問題です。しかし、それ以上に怖いのは、製造業における最大の固定費である「人件費」を、必要のない仕事に使ってしまうことなのです。
では、「いらないもの」を作るために人を使うのではなく、「いるもの」を必要なタイミングで作るために人を使うには、どうすればよいのでしょうか。
そして、仕事量に合わせて人を適正に配置し、「いらないものを作るための人件費」と「いるものを作るための残業」を同時に減らすには、どうすればよいのでしょうか。
その答えこそが、トヨタ生産方式の根幹である「JIT(ジャスト・イン・タイム)」と「小人化(しょうにんか)」にあります。
次回の後編では、この「小人化」によって、激しい時代の波に左右されない「安定経営の体質」をどうやって作るのか、その具体的なステップに迫ります。どうぞお楽しみに!
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