【KAIZEN三四郎ものづくり道場】忙しいだけの毎日から脱却せよ。「時間生産性の棚卸し」で会社と自分の未来を変える方法(前編:現状把握編)

前編テーマ:なぜあなたの時間は足りないのか? 恐怖の「時間の棚卸し」とABC分析

はじめ

 「毎日残業続きで、目の前の仕事をこなすだけで精一杯……」 「頑張っているはずなのに、なぜか利益が出ない……」

 多くの中小製造業の現場で聞こえてくる、こうした悲鳴。もしかすると、それは「時間の使い方」に重大なロスが潜んでいるサインかもしれません。

 今回は、業務改善の鬼「KAIZEN三四郎」と、やる気はあるが空回り気味の若手社員「ツクル君」の対話を通じ、見えない資産である時間を可視化する「時間生産性の棚卸し」について、前編・後編の2回に分けて解説します。
 この記事を読むと、あなたの会社の“時間のムダ”がどれだけ利益を奪っているかが数値で見えるようになります。
 後編では、その時間を“利益に変える方法”まで解説します。

【前編】現状把握編
テーマ:なぜあなたの時間は足りないのか? 恐怖の「時間の棚卸し」とABC分析
【後編】解決・実践編
テーマ:ムダを捨て、未来を買え。「標準化」とシステムで実現する劇的改善

第1章:なぜ「時間」も棚卸しが必要なのか?

ツクル君

はぁ……(深いため息)。今日もまた21時コースか。見積書を作っていたら、部材の在庫確認で現場に呼び出されて、戻ってきたらメールが山積みで……。三四郎さん、僕、あと3人くらい分身が欲しいですよ。

KAIZEN三四郎

ツクル、景気のいい深呼吸だな。また「忙しい病」の発作か?

ツクル君

ひどい言い方しないでくださいよ! 実際、トイレに行く暇もないくらい働いてるんですから。でも、月末の数字を見ると、社長に「お前、あれだけ残業して成果はこれだけか?」って嫌味を言われるんです。納得いきません!

KAIZEN三四郎

社長の言うことも一理あるぞ。ツクル、お前は工場の「棚卸し」は知っているな?

ツクル君

当たり前じゃないですか。決算前とかに、倉庫にある部品や材料、仕掛品の数を数えて、資産価値を確定させるあれですよね。正直、面倒くさくて嫌いですけど。

KAIZEN三四郎

その「面倒な作業」をしないとどうなる?

ツクル君

帳簿と実際の在庫が合わなくなります。利益が出ていると思っていたのに、実は不良在庫の山だった……なんてことになったら倒産しちゃいますよ。

KAIZEN三四郎

その通りだ。では聞くが、お前はなぜ「時間の棚卸し」はしないんだ?

ツクル君

えっ? 時間の……棚卸し?

KAIZEN三四郎

製造業において、材料や設備と同じくらい、いやそれ以上に貴重なリソースが「人の時間(工数)」だ。在庫の数が合わないと大騒ぎするのに、毎日8時間、いや10時間以上使っている「時間」が何に使われ、どれだけの価値を生んだか、どんぶり勘定のまま放置している企業が多すぎる。

ツクル君

言われてみれば……。「今日は頑張った」という感覚だけで、具体的に何分なにをしていたかは、日報に書くときも適当に埋めている気がします。

KAIZEN三四郎

それが諸悪の根源だ。「忙しい」という言葉は、思考停止の免罪符になりやすい。まずは、お前が今日一日、何に時間を「消費」し、何に「浪費」したのか。事実を突き止めることから始めるぞ。それが「時間生産性の棚卸し」だ。

ミニチェック
・過去3ヶ月で「探し物」で5分以上使ったことがある
・過去の見積や図面の保存場所が人によって異なる
・日報は感覚で書いていることが多い
・見積作成に30分以上かかる
3つ以上当てはまれば、時間の棚卸しが必要です。

第2章:恐怖の「行動ログ」作成

KAIZEN三四郎

具体的なやり方を教えよう。明日からの3日間、朝出社してから退社するまで、すべての行動を記録するんだ。

ツクル君

すべて、ですか?

KAIZEN三四郎

ああ。「10:00〜11:00 見積作成」みたいな大雑把なものではダメだ。「見積作成」の中身を分解しろ。「10:00〜10:15 過去の類似図面を探す」「10:15〜10:30 最新単価を調べるために電話」「10:30〜10:45 エクセルへの入力作業」……といった具合にな。

ツクル君

うわぁ、細かい……。いちいち記録していたら、それこそ仕事が進まなくなりますよ!

KAIZEN三四郎

多くの人間がそう言って逃げる。だがな、ダイエットをする時に食べたものを記録せずに痩せられるか? お金の節約をする時に家計簿をつけずに貯金できるか? 「現状把握」なくして改善なし。これは鉄則だ。メモ帳でもスマホのアプリでもいい。騙されたと思ってやってみろ。

(〜3日後〜)

ツクル君

三四郎さん……。記録を持ってきました。正直、見せるのが恥ずかしいです。

KAIZEN三四郎

ほう、どれどれ。……なるほどな。ツクル、お前はこの結果を見て何を感じた?

ツクル君

自分が思っていた以上に、「探している時間」と「迷っている時間」が多いことに驚愕しました。例えばこの日、見積もりに2時間かかっているんですが、実際に計算や入力をして「価値を生んでいる時間」は30分くらいなんです。残りの1時間半は、過去のデータを探し回ったり、担当者に確認のチャットを打って返信を待っていたり……。

KAIZEN三四郎

良い気づきだ。それが「主観」と「客観」のズレだ。お前は2時間「仕事をした」つもりになっていたが、実際には1時間半も「準備運動」をしていたに過ぎない。

第3章:時間を3つに仕分ける「ABC分析」

KAIZEN三四郎

ログが取れたら、次は仕分けだ。在庫管理でよくやるABC分析を時間にも適用する。リストアップした行動を以下の3つに分類してみろ。
A:正味作業(付加価値業務)
・顧客がお金を払ってくれる価値に直結する作業。
・(例)プログラミング、設計、商談、組立加工、企画立案。
B:付帯作業(準付加価値業務)
Aをやるために必要だが、それ自体は価値生まない作業。今の仕組みではやらざるを得ないもの。
・(例)情報収集、段取り、会議、移動、報告書作成、日報。
C:ムダ(非付加価値業務)
・すぐにやめても誰も困らない、あるいはやるべきではない作業。
・(例)探し物、手待ち、二重入力、修正、やり直し、不要な付き合い。

ツクル君

うーん、こうして分類してみると……。僕の業務、B(付帯作業)とC(ムダ)だらけじゃないですか! 特に「探し物」と「転記作業」が多すぎます。

KAIZEN三四郎

そうだ。多くの中小企業の実態は、A(正味作業)が全体の10〜30%程度しかないと言われている。残りの7割以上は、お客様にとって本来お金を払いたくない時間に費やされているんだ。

ツクル君

7割も!? ショックです……。僕が毎日残業しているのは、会社の利益にならない「C」を一生懸命やっていたからなんですね。

KAIZEN三四郎

厳しく言えばそうだ。だが、落ち込む必要はない。可視化できたということは、改善できるということだ。ここからが本当の勝負だぞ。

明日から3日間、あなた自身も“行動ログ”をつけてみてください。 後編を読む頃には、あなたの時間のムダが驚くほど見えてきます。

【後編に続く】
現状のムダの多さに愕然としたツクル君。では、具体的にどうやってこのムダを削減し、生産性を上げればよいのでしょうか? 後編では、いよいよ具体的な『断捨離』と『標準化』のアクション、そしてシステムを活用した解決策について解説します。

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