【KAIZEN三四郎ものづくり道場 新連載】 「人は、増やすな。」中小製造業が生き残るための“人手不足”脱出論(第2回):若者はなぜ逃げるのか? 「前時代的」な現場が抱える致命的なズレ

人手不足倒産の「前段階」

ツクル君

三四郎さん、前回の「人手不足倒産」の話
……正直、かなり堪えました。
ウチもいつかそうなるんじゃないかって。

KAIZEN三四郎

だろうな。だが、あれはあくまで「結果」だ。
本当に考えるべきは、なぜ人が集まらなくなったのかだ。
今の製造業は、人が辞めている以前に、
そもそも若者から「選択肢」として外されていることに
気づかねばならん。

数字が示す、製造業の現実

KAIZEN三四郎

まずは現実を直視しろ。
経済産業省等の「2023年版ものづくり白書」のデータだ。

34歳以下の若年就業者数(製造業)は、
この20年で、約130万人、約34%も減って
いる 。
・2002年:384万人
・2022年:255万人

一方で、65歳以上の高齢ワーカーは増えている 。
65歳以上の高齢就業者数(製造業)は、
・2002年:58万人
・2022年:90万人

ツクル君

若手が入ってこず、
ベテランだけで何とか回している……
まさにウチの現場そのものです。
いつか限界が来ますね。

若者は、製造業を嫌っているのか?

ツクル君

やっぱり、今の若い人は「油まみれの仕事」とか
「ものづくり」自体が嫌いなんでしょうか。

KAIZEN三四郎

違う。若者は、賢く仕事を選んでいるだけだ。
彼らは生まれた時からネットがあり、
情報を比較することに慣れている。
彼らが就職先を選ぶ基準は、非常にシビアだ。

1.成長実感: ここにいて自分が成長できるか?
2.汎用スキル: 他でも通用する技術が身につくか?
3.未来の可視化: 3年後、5年後の自分が想像できるか?


この「投資対効果(タイパ)」を冷静に見ているんだ。

「前時代的」に見える現場

KAIZEN三四郎

その視点で、アナログな中小製造業の現場を見てみろ。
スマホで世界中の情報にアクセスできる彼らが、
工場に入った瞬間、こうなる。

・情報はすべて「紙」か「口頭」
・予定はベテランの頭の中(ブラックボックス)
・技術は「見て盗め」という放置プレイ

ツクル君

 ……耳が痛いです。
「気合で覚えろ」と言ってしまって/います。

KAIZEN三四郎

若者から見れば、それは「アップデートが止まった
現場」
に等しい。
「同じ努力をするなら、スキルが体系化されている
IT業界に行こう」となるのは当然だろう 。
これは「若者の根性」の問題ではない。
業界側の「中身」が、時代のアップデートに追い
ついていない
のが原因だ。

「選ばれる工場」vs「選ばれない工場」

KAIZEN三四郎

この違いは決定的だ。
若者がどちらを選ぶか、一目瞭然だろう。

ツクル君

うわあ……。
右側(選ばれる工場)に行きたいです。
僕だってそうです。

KAIZEN三四郎

だろう?
「ITやデジタルは現場には早い」なんて言っている
場合ではない。
デジタル化は、業務効率化である以前に、「若手を
採用するための必須インフラ」
なんだ。

放置すると、現場で何が起きるか

KAIZEN三四郎

この「選ばれない状態」を放置すれば、どうなるか。
技能継承は途切れ、改善活動は停滞する。
そして、最後のベテランが抜けた瞬間、工場のノウ
ハウはゼロになる 。

ツクル君

それが、前回言っていた「人手不足倒産」の正体……。

今、製造業が打つべき「現実解」

KAIZEN三四郎

そうだ。だからこそ、今やるべきは
「求人票のデザイン」を変えることではない。
現場の「仕組み」を変えることだ。

1.仕事を見える化する(ブラックボックスを開ける)
2.ITを「若手の武器」として使う(システム化)
3.ベテランの知恵を「データ」に残す(標準化)

ツクル君

現場の中身を変えて、はじめて人が定着するんですね。

KAIZEN三四郎

その通りだ。
「人が育つのを待つ」のではなく、
「誰が来ても回る仕組み」を作る。
次回は、その具体的な方法――
どうやって属人化を排除し、
仕組みを作るかについて話そう。

編集後記(第2回)

「最近の若者は製造業を敬遠している」
そう感じている経営者の方は、決して少なくないと思います。

しかし、今回あらためて整理してみると、
若者が製造業を選ばなくなった理由は、
給与や待遇、あるいは根性論の問題だけではないことが見えてきます。

仕事の中身が見えない。
評価の基準が分からない。
自分が数年後、どんな技術や役割を身につけているのか想像できない。
こうした不安を抱えたまま働く現場は、
デジタル環境に慣れた若い世代にとって、
決して「魅力的な職場」には映らないのが現実です。

人が来ないのは、若者が変わったからではありません。
現場の仕組みが、時代の変化に追いついていないだけです。
若者を惹きつけるために必要なのは、
派手な求人広告でも、耳障りのよい言葉でもありません。
仕事が見え、成長が見え、評価が見える現場をつくることです。

次回は、そのために避けて通れない
「属人化をどう崩し、業務をどう設計し直すのか」について、
具体的に掘り下げていきます。

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