メルマガ 「DX ナビゲーション」バックナンバー:第33号【安心在庫のワナ:前編】在庫が増える“本当の原因”を断て!キャッシュフローを悪化させる工場内の「ムラ・ムダ・ムリ」

本記事は2回連載の 【前編】です。メールマガジンの内容をHP記事用に一部加筆しています。

この連載の目的

 「在庫は多いほど安心」。多くの現場で常識とされているこの考え方こそが、あなたの会社のキャッシュフローを蝕む最も大きなワナかもしれません。

 在庫は、会計上は「資産」です。しかしその実態は、倉庫という名の金庫に閉じ込められた、流動性の極めて低い「動かぬ現金」です。そして、その在庫を放置するたびに、倉庫費用、人件費、陳腐化リスクといった、経営を圧迫する見えないコスト(眠れるコスト)が発生し続けています。

 本記事では、この「在庫が多い=安心」という誤った認識が生んだ、『安心在庫のワナ』を断ち切るための実践的な在庫ダイエット戦略を解説します。

・倉庫の奥に、1年以上動かしていない段ボールがある
・担当者がいないと、部品の在庫数が分からない
・『とりあえず多めに作っておこう』が口癖になっている
→1つでも当てはまるなら、この記事はあなたのためのものです。

前編(本記事)の役割

 本記事【前編】では、まず過剰な在庫がもたらす「隠れたコスト」を明確にし、これが資金繰りを悪化させる「八番目のムダ」であることを明らかにします。

 その上で、在庫を「ムリに減らす」のではなく、「なぜ在庫が必要になってしまうのか」という根本原因に焦点を当てます。在庫は、生産現場の「ムラ・ムダ・ムリ」という病が引き起こす結果であり、原因ではありません。

 私たちは、この「在庫が増える“本当の原因”(ムラ・ムダ・ムリ)」を工場内のプロセスから特定し、真の体質改善への道筋をつけます。

「安心在庫」が経営を蝕む!資金繰りを悪化させる『八番目のムダ』とは

 在庫は会計上は確かに“資産”ですが、その実態は流動性の極めて低い、動かぬ現金です。そして、在庫を置いておく間にも、製造業の利益を圧迫する「眠れるコスト」が発生し続けます。

 

 これらは、トヨタ生産方式でいう「在庫のムダ」に加えて、資金繰りを悪化させる「八番目のムダ」とも言えます。さらに、在庫が増えれば「探すムダ」「運ぶムダ」「手待ちのムダ」が増え、現場の生産効率まで落ちてしまうのです。

 在庫は、単なる物理的なモノではなく、「時間を止めてしまった現金」です。この認識を持つことが、在庫ダイエットの第一歩です。

在庫が増える“本当の原因”を断て!

 在庫削減の本質的な解決は、単に在庫を「ムリに減らす」ことではありません。なぜ過剰な在庫が必要になってしまうのか、その「増える原因(ボトルネック)」を現場のプロセスから突き止めることです。

 在庫は、工場内で発生するさまざまな「ムラ・ムダ・ムリ」の結果であって、原因ではありません。

 特に在庫を肥大化してしまう「ムラ・ムダ・ムリ」の具体的な悪因は以下の通りです。

(1)生産計画の「ムラ」
 日々の注文変更に振り回され、「また変更があるかも」と先読みで多めに部品を仕込んでしまう。

(2)リードタイムの「ムダ」
 段取り替えに時間がかかるため、「まとめて作った方が効率が良い」と大ロット生産を行い、倉庫が満杯になる。

(3)管理基準の「ムリ(曖昧さ)」
 「どこに・いくつ」あるかが不正確なため、「足りなくなったら怖い」という心理的不安から過剰発注してしまう。

 在庫を「我慢して減らす」のはリバウンドのもとです。 目指すべきは、「在庫を持たなくても回る体質」への肉体改造(在庫ダイエット)なのです。

【前編まとめ】「安心」という名の麻薬を断ち、現金を解き放て

 本記事では、「在庫が多い=安心」という常識が、実は会社の資金繰りを悪化させる「ワナ」であることを解説しました 。
・在庫の正体: 会計上の資産ではなく、倉庫に眠る「動かぬ現金」であり、管理費や劣化リスクを生む「八番目のムダ」です 。
・増える原因: 在庫そのものが悪いのではなく、現場のプロセスに潜む「ムラ(計画変更)・ムダ(長い段取り)・ムリ(曖昧な管理)」が、結果として在庫を生み出しています 。
・対策の第一歩: 闇雲に減らすのではなく、「なぜ在庫を持たないと不安なのか?」という根本原因(ボトルネック)を直視することから始まります 。

【後編予告】
 原因が特定できれば、解決策は見えてきます。後編ではいよいよ、この原因を取り除き、会社を筋肉質な体質へ変えるための具体的処方箋「在庫ダイエット三カ条」をお伝えします 。


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