メルマガ 「DXナビゲーション」バックナンバー:第30号 納期に追われ、御社の「一本足打法(標準)」を崩していませんか? 王貞治と松井秀喜が教える、品質安定の真髄

はじめに

 私たちの世代にとってプロ野球の王貞治選手は、まさにスーパーヒーローでした。

 今回は、製造業の皆様が日々直面されている「品質の安定」と「技術伝承」という根深い課題を、野球界の永遠のヒーロー、王貞治氏の超一流の哲学から掘り下げてみたいと思います。

 王氏のエピソードには、私たちの生産現場に不可欠な「標準化」と「異常管理」の本質が隠されています。

王貞治氏の「フォーム」が教える、標準化の重み

 我々の世代にとって、王貞治氏は単なる選手ではなく、野球というスポーツの枠を超えた「スーパーヒーロー」でした。現役時代、通算868本という空前絶後のホームラン世界記録を打ち立てた王氏のスタイルは、「一本足打法」という独自のフォームに象徴されます。

 王氏は、来た球を強く振りぬき、そのほとんどをライト方向へ打ち込む「型」を貫きました。この絶対的な型に対し、広島カープが極端な守備体系、いわゆる「王シフト」を敷いたのは有名な話です。サードの選手がショートの守備位置まで移動するという、常識破りのシフトです。

超一流の哲学:ヒットよりフォームの維持

 当時、王選手が極端なシフトを前にして、あえて流し打ちでサードの空いたスペースを狙えば、容易に長打が生まれたはずです。しかし、王選手はそれでもライト方向へ引っ張り続けます。

 試合後、広島の監督が王選手の対応について問われた際、次のように語った言葉は、超一流の哲学を端的に示しています。

 「もし王があの場面で流し打ちすればフォームが崩れてスランプになるはずだ。そうすれば、ヒットの2本や3本など安いもんだ。しかし、やはり(王選手は)ライトに引っ張った」

 この言葉は、私たち製造業に携わる者にとって、極めて重い示唆を与えてくれます。

製造業における「フォーム」=標準化

 王選手にとって、一本足打法は「最高のパフォーマンスを生み出す唯一無二のフォーム(型)」であり、これは企業における「標準化された作業手順」そのものです。

 流し打ちという「王シフトを破る一時的な近道」は、製造現場で「今日は納期が厳しいから、この検査工程は飛ばそう」「この工具をここに置いた方が、今日は楽だ」といった「気の緩み」や「個人的な近道」を許すことに相当します。

 一時的に作業が早くなったとしても、それは最高の「標準というフォーム」を崩し、その後の品質の安定性や生産性に甚大な悪影響を及ぼします。

 正しい作り方(フォーム)を維持することは、日々切磋琢磨し、常にメンテナンスし続けることが不可欠です。そして、その過程を改訂履歴として記録することこそが、ベテランの知恵を未来に残す「組織の経験知」であり、技術伝承の鍵なのです。

松井秀喜氏の問いが示す、「素振り」と「異常管理」の深い関係

 さらに、「標準の維持」の先に何があるかを示す、有名なエピソードがあります。
それは、長嶋茂雄氏の葬儀の際、松井秀喜氏が弔辞で語った「監督、今日、素振りないですよね?」という問いかけです。この二人が、なぜ球を打つ練習ではなく、地道な「素振り」を欠かさなかったのか。

 素振りは、「外部要因のない純粋なフォームの反復練習」です。これを製造業に当てはめると、素振りこそが、「標準」を体にしみ込ませる日々の確認行為です。

 なぜ、素振りが重要なのか? それは、「異常の早期発見」のためです。

異常とは「いつもと違う」というサイン

 素振りを続ける中で、選手は「いつもと違う」「振りが重い」といった「異常」を、自身の五感で察知します。この「異常」は、まだスランプ(不良)ではないにもかかわらず、放置すれば必ずスランプに陥る危険信号です。

 製造業の現場も同じです。職人の「勘」だけに頼るわけにはいきません。スポーツは「感覚」ですが、製造業は「数値」で管理できます。私たちは、この「異常」を数値制御して「見える化」しなければなりません。この見える化の仕組みこそが「異常管理」であり、職人技の『属人化』からの脱却に直結します。

異常=不良ではない

 例えば、±0.5の公差製品がいつも±0.3で出来上がっていたとします。しかし今回+0.4の品物があった場合これは不良品ではないですが異常品ではあるのです。しかしいつも±0.3で出来ているのに0.4で出来てきたという「いつもと違う」事実は、機械がおかしいのか刃具が摩耗しているのか「何か」が起きているはずです。これを放置すれば、近いうちに公差を外れた不良品が発生するかもしれません。

不良: 公差(例:±0.5mm)を逸脱し、製品の機能が損なわれた状態。
標準: 過去の実績から導かれた「いつも通り、あるべき姿」。例として、公差±0.5mmの製品が、通常は±0.3mmの範囲で出来上がること。
異常: 不良ではないが、標準から逸脱した状態。例として、いつも±0.3mmで出来ていたものが、突如+0.4mmで出来上がった状態。

 「異常管理」とは、不良になる前の「異常」の段階で手を打つことであり、これを実現するためには、まず「標準」が明確に定義されている必要があるのです。

最後に:御社の「一本足打法」は、守られていますか?

 かつて王選手は、空いたサードを狙う「近道」を選ばず、最高のフォームを貫き、通算ホームラン868本という不滅の記録を打ち立てました。

 御社にとっての「一本足打法」、それは、長年の経験と知恵が詰まった「正しい作り方の標準」に他なりません。「納期が厳しいから…」「今回は大丈夫だろう…」と、目の前の楽に流され、無意識のうちにそのフォームを崩していませんか?

 最高のパフォーマンスは、「標準というフォーム」を維持し、日々の「素振り=異常管理」を徹底することでしか実現できません。しかし、人の記憶や「勘」だけに頼るには限界があります。弊社の生産管理システムTEDは、この超一流の哲学を、貴社の現場で仕組みとして実現します。

 松井選手が長嶋監督との「素振り」を生涯の指針としたように、TEDで「標準」を見える化し、「異常」を数値で早期発見する体制を共に構築し、品質と技術を未来永劫、安定させませんか。

 まずはTEDがどのように貴社の「一本足打法=標準」をデジタルに記録し、「いつもと違う=異常」を数値で早期に検知するか、デモンストレーションでご体験ください。

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