【KAIZEN三四郎ものづくり道場】VUCA時代に勝つ製造業の管理術:3つの回復力(レジリエンス)原則

登場人物
・KAIZEN 三四郎:生産現場を知り尽くした経営経験豊富なベテランコンサルタント。常に冷静沈着で、本質を突く洞察力を持ちます。
・ツクル君:中小金属加工企業「サクラ製作所」の若手ホープ。現場での経験は豊富だが、VUCA時代への対応に悩んでいます。
舞台
サクラ製作所の会議室。ホワイトボードには「VUCA」の文字が書かれています。
ツクル君が、KAIZEN三四郎にVUCA時代の製造業の勝ち残りについて教えを受けています。
あなたの計画は、なぜいつも「顧客変更」で白紙に戻るのか?
今日の製造業では、顧客の変更、サプライチェーンの混乱、突発的な設備故障により、計画が崩れることが日常茶飯事です。これがVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代です。中小製造業がこの不確実性を乗り越えるには、「レジリエンス(回復力)」を備えた新しい管理が必要です。
ベテランコンサルタントKAIZEN三四郎が、サクラ製作所のツクル君に、VUCA時代を勝ち抜く3つの原則を伝授します。

【KAIZEN三四郎の金言】VUCA時代に最も変革が必要なのは、「計画通りに実行する管理」から「計画が崩れることを前提とした管理」への転換だ。
VUCAを自社の言葉で定義する
ツクル君;三四郎さん、本日はお忙しいところありがとうございます。改めて、この『VUCA』という時代、私たち中小のものづくり企業はどう生き残っていけばいいのか、そのヒントをいただきたくて…。
KAIZEN三四郎:ツクル君、元気があってよろしい。まず、そのVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)を、君の会社の言葉で具体的に説明してもらおうか。抽象的な概念で終わらせてはいけない。
【補足:VUCAとは?】
VUCA(ブーカ)とは、以下の4つの単語の頭文字から成る、現代の予測困難な社会状況を示す言葉です。

ツクル君:はい。当社の場合は、V(変動性)は、短納期化とロットの小口化。U(不確実性)は、数年先の自動車産業の動向が見えないこと。C(複雑性)は、多品種少量生産で工程が絡み合っていること。そしてA(曖昧性)は、求められる品質基準の『ちょうどいいライン』が顧客によって違うこと、でしょうか。
「管理」の考え方を変える
KAIZEN三四郎:見事だ。では、それを踏まえて、君たちの『ものづくり』自体は変えられるか?
ツクル君:正直、難しいです。金属加工の技術や設備はすぐには変わりません。変えられるとすれば、その『管理』の方法、あるいは『ものづくりの進め方』だと思うんです。
KAIZEN三四郎:その通り。VUCA時代に最も変革が必要なのは、『管理』の考え方だ。ツクル君、君たちは今、何を最も頑張って管理しようとしている?
ツクル君:やはり『納期』と『コスト』です。特に、いかにムダをなくし、効率よく生産するかを…つまり、『計画通りに実行する管理』に力を入れています。
KAIZEN三四郎:なるほど。それが以前の『安定期』の管理だ。もちろんそれは今も大切なことに変わりないが、最近はこんなことはないかね? 計画を立てても、すぐに顧客の都合で変更になる。材料が入ってこない。設備の故障が突発する。つまり、『計画通りに実行できない管理』になっているということは?
ツクル君:おっしゃる通りです。計画を立て直す時間の方が長いくらいで、現場は疲弊しています。
VUCA時代に必要な“回復力”の3原則
KAIZEN三四郎:そこで、VUCA時代の新しい管理のパラダイムが必要になる。それは、『計画通りに実行する管理』から『計画が崩れることを前提とした管理』への転換だ。
ツクル君;計画が崩れることを前提に…ですか?
KAIZEN三四郎:そうだ。ポイントは3つ。
【VUCA時代に必要な新しい管理の3つの柱】
1. 計画の粒度を極限まで小さくする:『今日』の実行計画に絞り、修正コストを最小化
2. 情報共有のリアルタイム性:現場の全員が『今』を共有し、自律的な判断を促す
3. 管理の目的を「効率」から「対応力・回復力」へ:ムダを許容する『バッファ』で全体停止を防ぐ
KAIZEN三四郎:1つは、『計画の粒度を極限まで小さくする』。長いスパンの計画は単なる目標と捉え、実行計画は『今日一日の、この部品のこの工程まで』と短く切る。これにより、崩れたときの修正コストを最小化できる。
ツクル君:なるほど。製造業で言えば、『短期決戦・即時修正』の管理と捉えれば良いですね。
KAIZEN三四郎:2つ目は、『情報共有のリアルタイム性』。在庫状況、進捗、不良発生といった情報を、特定の管理職だけが持つのではなく、現場の全員が『今』を共有できる仕組み。例えば、現場の端末で瞬時に進捗を更新するとか。情報が早ければ、対応も早くなる。
ツクル君:そこはIT化を進めたい部分です。でも、中小企業には投資が…。
KAIZEN三四郎:高価なシステムは要らない。まずはシンプルなクラウドサービスを利用することだ。肝心なのは、『誰でも瞬時に現状を把握し、自律的に判断できる環境』を作ることだ。
ツクル君:自律的に…ですね。
KAIZEN三四郎:そして3つ目。これが最も重要だ。『管理の目的を『効率』から『対応力・回復力(レジリエンス)』へシフトする』ことだ。少しのムダを許容してでも、急な発注変更に対応できる『遊び』や『余裕』を工程に持たせる。例えば、ライン全体の稼働率や、特定の重要工程の能力をあえて9割程度に抑えることだ。余剰となった1割の能力を、急な特急品や設備トラブル発生時の『対応リソース』として機能させる、などだ。
ツクル君:なるほど。効率を追求しすぎて、カツカツの状態でいると、かえってトラブルの時に全体がストップしてしまう。少しの余裕が、変化に対応できる強さになるということですね。
KAIZEN三四郎:その通り。VUCA時代は、『転ばないようにする管理』ではなく、『転んでもすぐに立ち上がれる管理』が強いのだ。ツクル君、君の会社は最高の技術を持っている。それに、この新しい『回復力のための管理』というエンジンを搭載すれば、不確実な未来にも自信を持って立ち向かえるはずだ。
ツクル君・三四郎さん、腑に落ちました。『計画が崩れることを前提』に、現場の自律性を高め、『対応力』を管理の新たな指標にします。まずは、今日の進捗をリアルタイムで共有する仕組みから始めます!
KAIZEN三四郎:うむ。その熱意があれば、サクラ製作所の未来は明るい。期待しているよ。
まとめ:VUCA時代は「転ばない管理」ではなく「転んでもすぐに立ち上がれる管理」が強い
最高の技術を活かすためにも、今こそ『回復力のための管理』というエンジンを搭載する時です。
あなたの現場では、急な仕様変更やトラブル発生時、「計画を立て直す時間」が「モノを作る時間」を超えていませんか?
貴社の管理体制がVUCA時代の変化に耐えられるか、以下の具体的な課題をお持ちでしたら、プロフェクトの専門コンサルタントまでご相談ください。
・顧客変更・突発トラブルによる「計画の立て直し工数」を大幅に削減したい
・現場の全員が使える「リアルタイム進捗共有の最適手法」を提案してほしい
・『回復力』を上げるためのIT化投資を、最小限に抑える方法を知りたい

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