メルマガ「DXナビゲーション」バックナンバー:第19号 生産管理システムをうまく運用できる企業とできない企業の差は?

生産管理システムをうまく使えるかどうかは今後の社運を左右する

 私たちがお客さまの元に足を運ぶと、せっかく生産管理システムを導入したのに、「システムが悪い」とか「使いにくい」とか言って、うまく運用されずにシステムが半ば眠ったままになっていることがよくあります。

 ベンダーのセールストークに何の疑問を持つこともなく導入した結果なのか、誤った運用をしているせいなのか、はたまた社員の意見を聞かずに社長の一存で勝手に決めてしまった結果なのか…導入された生産管理システムが有効に使われていない例が多く見受けられます。数千万円から中には億に届かんばかりの高額な費用をかけているところもあり、まことにもったいない話です。

 このような状況を目の当たりにするにつけ、中小製造業では、生産管理システムを導入しさえすれば、生産に関わる業務を効率的に管理できると、簡単に考えているケースが多いのではないかと思いますが、いかがでしょうか。いわゆる「システムありき」の考えです。導入することがゴールではありません。あくまでも経営のツールです。正しい方針のもとに、正しいシステムを選んで、正しい従業員教育をして、正しい使い方をしなければ、効果は出ません。運用の仕方に成否はかかっています。DXへの取り組みの重要性がますます高まる中、これからの中小製造業にとって生産管理システムを活用して生産性を高めていくことができるかどうかは、まさに社運を左右すると言っても過言ではありません。

 ではどのような点に注意してシステムを導入し、運用していけば本来の効果を上げることができるのでしょうか?また、生産管理システムをうまく運用できる企業とできない企業の差はどこにあるのでしょうか?私たちが多くのお客さまを拝見してきた経験から、ここは大切という点をご紹介したいと思います。参考になれば幸いです。

生産管理システムをうまく運用できる企業とできない企業の差は?

 生産管理システムをうまく運用できる企業とできない企業の差は、いくつかの要素に起因します。以下に主な違いを挙げます。

(1)システム導入の目的を明確にすること

 自社がなぜ生産管理システムを導入したいと考えるのか、まず、その目的を明確にすることが大切です。例えば、『情報の一元管理をしたい』(特定の社員が担当している業務の詳細や進め方が、当人以外、分からない、属人化の弊害)、『受注から出荷までの効率化を図りたい』、『材料や部品・製品の在庫不足や欠品を防ぎたい』、あるいは『過剰在庫が起きないにようにしたい』などです。生産管理システムを導入することはゴールではなく、あくまでも自社の課題を解決する経営のツールであることを肝に銘じる必要があります。うまく運用できる企業は、システムを導入する前に、どのような目的を達成したいのかを明確にし、それに沿った戦略を立てます。一方で、目的が不明確なまま導入ありきで進めてしまうと、システムがうまく機能せず、期待した効果を得られません。

(2)導入に際しては社長が腹をくくって活用する決意が必要

 中小製造業が生産管理システムを導入するにあたっては、まず、社長が腹をくくって先頭に立つことが重要です。ただし、社長の独りよがりでは従業員は付いてきません。自社に合うシステムを選び、実務者が腑に落ちたものでなければなりません。実際に使うものが、納得して使いこなさないと効果は発揮できません。得てして、実務者は「システムが悪い」とか「使いにくい」とか、システムに問題があるかのごとく言ってきますが、社長が率先垂範して「使いこなせ」と口をすっぱくして言うことが必要です。うまく運用できる企業は、経営層がシステムの導入・運用に積極的に関与し、リーダーシップを発揮しています。経営層がシステムの重要性を理解し、関与することで、企業全体の協力を得やすくなります。経営層が関与しないと、現場での協力が得られにくく、システムがうまく運用されないことになりがちです。

(3)従業員の教育とトレーニング

 システムがどれだけ優れたものであっても、使い方を理解しないと効果を発揮しません。うまく運用できる企業は、導入時に従業員向けの十分な教育・トレーニングを実施し、システムをスムーズに運用できるようにします。新しいシステムを導入する際、従業員が変化に対して抵抗感を示すことがあります。しかし、適切な教育とトレーニングが行われることで、従業員は新しいシステムの価値を理解し、導入に対する抵抗が減少します。また、システムに対する理解が深まることで、変化に対する柔軟性が高まります。逆に、トレーニングを軽視すると、操作ミスや誤ったデータ入力が増え、システムの効果が薄れます。

 システム導入後の運用とサポート体制も大切です。うまく運用できる企業は、システムの不具合や問題が発生した場合に迅速に対応できる体制を整えています。問題が放置されると、システムの運用が滞り、従業員が使わなくなってしまうことがあります。システムを使ううちに見えてくる課題や不便な点を改善し、運用が円滑になるようにします。

(4)システム構築は一部の部門ではなく全社的に進めること

 生産管理システムは生産フロー全体を管理するもので、営業や設計、調達、製造など、さまざまな部署にまたがるものです。よって、中小企業がシステムを導入する際には、全社的なプロジェクトを立ち上げ、社長自らがプロジェクトリーダーとなって(またはそれくらいの決意を持って)、部署横断的に取り組むことが重要となります。単なるシステムにあらず、工場の仕組みそのものであると認識すべきです対して、社内における初期の打合せが不充分で、関連部門の協力が得られなかったのでは全体最適は実現できません。思い切って1〜2年程度かけて全社横断で意識改革、土壌整備をしていくくらいの覚悟が必要です。

(5)データの品質管理

 生産管理システムはデータに依存して動作します。データが不正確だったり、古くなっていたりすると、システムが正しく動作しません。うまく運用できる企業は、データの入力・更新・管理をしっかりと行い、常に正確で最新の情報をシステムに反映させるよう努力しています。誤った在庫情報や工程データに基づいて計画が立てられると、過剰な在庫や欠品、工程の遅延などが発生し、効率的な生産ができません。従業員が、「システムが悪い」とか「使い勝手が悪い」と言って、入力しなければならない項目を入力しないで手抜きするようなことは絶対に避けなければなりません。

(6)単なる受発注だけではなく全体最適のシステムを選ぶ

 生産管理システムを選定する場合、特に注意しなければならないことがあります。それは生産管理システムという名称がついていても、機能制限や端末制限を行えば、それは単なる、受発注システム、在庫管理システム、図面管理システムであり、本来の意味での生産管理システムと呼ぶことはできません。

 生産管理の機能は、人間の臓器と同じで、どれかの働きを止めたら、本来の管理ではなくなります。中小製造業にとって何より重要なのは部分最適ではなく、工場全体の最適化です。機能売りのシステムは、個別工程の効率を上げることはあっても、生産工程全体の最適化という点では十分な改善効果を上げることはできません。うまく運用できている企業は単なる受発注管理ではなく、受発注から出荷まで一貫して管理できるシステムを選択しています。

 うまく運用できていない企業の中には、最初は比較的安価と思っていたものの、受発注でしか使えずに、後でオプションでQCDに関する機能を積み上げていくと、驚くような高額な費用になって困ったという例を耳にします。これでは皆さんの課題を真に解決するものとはなりません。機能制限は使う側が決めるものであり、値段で左右されるものではありません。

まとめ

 生産管理システムは会社を良くする手段であり、目的ではありません。目標である「理想像」を描き、そこに向けた改善ステップを検討し、そのためにいかにシステムを活用していくか、いかに従業員の取り組み姿勢を高めるか、会社の風土を変えていくかが、システムをうまく運用する上でのポイントとなります。そして、システムを導入する際には、なぜ自社にとってそのシステムが必要なのか、どのようなビジネス上の価値(企業のみならず、従業員にとってのメリットも含めて)を生むのかを明確にして、全社員で共有することが大切です。

 いまだに生産管理システムの導入に二の足を踏む企業が多い中、そうした企業が一歩を踏み出せるよう、また、すでにシステムを導入済みの企業は、改めてリプレースして活用する際の参考となるよう、注意点をご紹介させていただきました。本稿が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。

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