【2023年最新版】製造業における標準化とは?標準化の基本から進め方まで徹底解説!
標準化の基本
(1) 標準化とは
標準化とは、業務を最適な方法に統一し、誰でも理解、実行できるようすることです。
標準化とは、「実在の問題又は起こる可能性がある問題に関して、与えられた状況において最適な秩序を得ることを目的として、共通に、かつ、繰り返して使用するための記述事項を確立する活動」
JIS Z 8002:2006-1.1
社内の定型業務を標準化し、その詳細をマニュアルにまとめておくことで、誰でも業務を行うことが可能です。また、マニュアルを作成する際、業務のプロセスを見直すことで、無駄な作業をなくし、業務改善につなげる効果も期待できます。
一方、標準を定めずに任せてしまえば、手続などが多様化してしまい混乱が生じ、ムダが発生してしまいます。また、特定の従業員でなければ品質を維持できない「属人化」を招いてしまう恐れがあります。
社内標準化は、特定の企業や組織内で社内規格を制定し運用されますが、他の上位レベルの規格を遵守する形で社内規格が制定することが推奨されます。
上位レベルの規格としては、ISOや日本産業規格(JIS)などが存在します。詳しくは以下の記事をご参照ください。
(2) 標準化のメリット 5選
① 品質の安定と向上
業務標準化を行うことで、誰が業務を担当しても、 作業の抜け漏れやミスが発生しにくくなり、結果として業務品質の安定化につながります。また、従業員同士で作業内容を共有しやすくなる点も重要です。
業務品質が不安定な企業では、その安定を目的として業務標準化を実施するとよいでしょう。
品質を保証するためには、設計品質や製造品質を安定させる必要があり、設計や製造段階での標準化により、4Mのバラツキを抑えることが必要となります。
4Mについては以下の記事をご参照ください。
② コスト削減
標準化により部品・原材料の種類を削滅することで、直接的に部品、原材料の価格を低減できます。また、共通化による設計の合理化や費管理コストの低滅など間接コストの合理化にもつなげることができます。
③ 業務の効率化
各部門の業務について標準化する過程で、業務プロセスを見直し、合理的な仕事のやり方や業務のルール化により仕事の効率化が可能となります。また、業務の手順や方法の統一により、仕事のミスが減る効果も期待できるでしょう。
④人材の育成
近年では、労働力人口の減少に伴い、多くの企業で人手不足や技能伝承が課題となっています。その中で業務の標準化が図られておらず、時間をかけておこなうOJTでは、事業継続すら危うい状態となってしまいます。
標準化を行うことで、業務内容の習得が効果的かつ効率的になり、新人の早期戦力化や多能工化が進められます。具体的には、各部門での標準書作成により、技術や業務の情報を周知することが可能となる他、社内教育用として活用することで技術や業務の保持や伝承が期待できます。
また、離職による業務停止リスクの低減を期待できることもメリットの一つです。業務に関してわからないことがあった際に、社内の資料を読むことで不明点を解消できるようになります。また、不明点を誰かに質問する際、聞かれた側が答えやすいうえ、回答に大きな違いが生じにくいこともポイントです。
⑤ 安全の確保
機器の操作や作業の標準化により、安全と衛生の確保、健康の維持が可能となります。
(3)標準化の注意点、デメリット 2選
①標準化が難しい業務も存在する
求められる知識や技能のレベルが高いこと業務の場合、標準化が難しいことがあります。
また、素早い対応が求められる業務の場合、手際よく業務をこなせる人間が対応せざるをえない場合があります。そのような業務が続けば、周囲に知識やノウハウは伝わらず、属人化してしまいます。さらに、忙しくてマニュアルを作る時間もなく、あるいはあえて標準化しない可能性にも繋がります。また、標準化されていなければ、作業のミスや不正も外部からは分かりにくいため、ブラックボックス状態にしておきたいという動機から業務を属人化してしまうことが考えられます。
②マニュアル通りにしか動けなくなる
業務標準化には、個人の思考を停止させるリスクもあります。標準化された業務はミスこそ減らせるものの、イレギュラーな業務には対応できない社員が出てくる可能性も考慮しなければなりません。
業務内容によってはマニュアルに書かれていない柔軟な対応も求められるということと、臨機応変に動けなくなることで、万一の際にミスやトラブルが起こるおそれもあることを押さえておきましょう。臨機応変に対応が必要な業務においては、マニュアルの内容を限定的に書きすぎないことや、イレギュラー対応時に過去の対応履歴を参照できる環境づくりなども必要です。マニュアル通りに動くだけでなく、マニュアルの情報を活用して動けるよう工夫してみましょう。
標準化の進め方
前述のように標準化は、標準を設定し、これを活用する組織的行為です。したがって、社内標準化を進めるステップは標準化の推進体側づくり、標準化の実施と管理となります。
(1) 社内標準の原則
社内標準化は、日常業務の効率化を図るためのものであり、実務を担当する各部門がみずから推進するべきです。
しかし、標準化を推進し成果を上げるためには、標準化の重要性を、経営者をはじめ全社員が認識して取り組む必要があります。全社員が経営方針に基づいて、その能力を発揮させるためには全社的な推進組織が必要となります。
一般に推進組織の構成は、推進責任者(制定・改定の決済)、推進委員会(審議)、推進部門(標準化実施サポート)、実施部門(各種標準類に作成)です。
社内標準を組織的に整備するためには、次の要件を満たすことが必要となります。
- 実行可能な内容であること
- 文章、数値、図表などによって成分化され、具体的・客観的に規定されたものであること
- 関係者の合意で決められていること
- 社内標準やISOやJISなどの社外規格と整合性がとれていること
- 必要に応じて改定され、常に最新の状態に維持管理されていること
- 遵守しなくてはならないという権威づけがなされていること
(2) 社内標準化の対象
標準化の対象となる業務の例として以下のようなものが挙げられます。
- 総務の職務分業規程
- 人事の採用規程
- 営業の販売管理規程
- 技術の図面管理規程
- 製造の標準文書規程
すべての業務を標準化の対象とする必要はなく、以下のような優先順位を決め実施していくことが重要です。
①繰り返しが多いもの
何度も繰り返される業務を標準化すると効果が大きい。
②系列化できるもの
お互いが深い関連をもった業務を標準化し混乱を防止する。
③複数人が関与するもの
複数の人が行う業務(作菜)の結果を一定水準に保つために標準化を行う(だれが行っても同じ品質が保たれる)。
④重点管理が必要なもの
不適合品の発生が多い工程や品質に重要な影響を与える工程などを標準化し重点的に管理する。
社内標準化の範囲で、品質管理と特に関連のあるのは、作業方法(作業指示書、作業マニュアル、作業標準書など)、品質、技術(仕様書、規格書、管理標準書、QC工程表など)が挙げられる。
標準文書を作成しただけでは、標準化の効果は上がらない。標準文書を用いて管理者に標準化の効果を理解させるための教育や新人の訓練を、計画的に実施することなどが必要である。また、ミスが起こったときに、標準どおりに実施して起こったものなのか、標準が守られないで起こったのかをチェックし、前者の場合は標準の見直しが必要である。後者の場合は、教育訓練が欠かせない。
(3)作業標準
品質管理に関連する社内標準の代表的な作業標準について、目的や作成のポイントは以下の通りです。
作業標準とは、「作業の目的、作業条件(使用材料、設備・〒具、作業環境など)、作業方法(安全確保を含む)、作業結果の確認方法(品質、数社の自己点検など)などを示した標後」(IS0 8002:2006-100.10)と定義される。
製造工程を対象に、設計品質を選成し、所定の原価、工数で、安全に、楽に製品を作るための適切な作案方法を規定したものである。作楽標準を文書化したものを、作業標準書といいます。作業標準書は、作業手順書、作業指示書、作楽マニュアルなどと呼ばれることもあります。
1) 作業の標準化の利点と目的
作業の標準化により、不適合品や作業ミスの防止、品質の安定化、作業能率の向上、作業の安全確保などのほか、作業を明確化することにより、改善が容易になるという利点もあります。
作業標準の目的は、作業者が代わっても、標準に示された方法で作をすることで、安定した製品が産出されることにある。決められたコストと納期で、安定した品質の製品を産出するための作業方法や作業条件、作業結果の確認方法などを規定しています。
2)作業標準の内容
一般に、作業標準の主な内容は、適用範囲、目的、使用原材料、設備・機器、作業方法・手類とポイント、管理項目・方法、品質特性・規格・検査方法、作業者の技能レベル、安全衛生上の留意点などです。
作業標準を作成する際は、以下の点に注意しましょう。
- 実行可能であること
- 作業標準とおり行うことで、不適合品が出ないこと
- 具体的な行動の基準を示しわかりやすいこと
- 他の標準と矛盾しないこと
- 常に改定され、最適な方法が雑持されていること
- 作業の要点と達成すべき結果が示されていること
- 結果の評価方法と評価基準が示されていること
- 関係者の理解が得られていること
標準化には生産管理システムが便利!
属人化を無くし、業務の標準化を進めるためには、生産管理システムを導入し、基盤を構築することが有効な手段です。
特に、近年は、カスタマイズによって生産管理システムを自社の業務プロセスに合わせるのではなく、パッケージの機能に自社の業務をフィットさせ、それによって短期間で業務の標準化を図るDXが主流です。
特に近年のクラウド型の生産管理システムは常にバージョンアップを行なっています。しかし、カスタマイズばかり繰り返すと、そういった新しい機能を享受できなくなってしまいます。
また、カスタマイズによって最適なIT基盤を構築したとしても、ビジネス環境が日々変化する現在において、その基盤がいつまでも最適とは限りません。ベストプラクティスに基づいたテンプレートをそのまま利用し、自社の業務を改変することで、業務の標準化と、そしてビジネス環境の変化や技術の進歩に合わせて柔軟に対応できるIT基盤を活用できます。
生産管理システムを導入し、業務プロセスとテクノロジーに自社をすみやかに適合させることが、求められる業務標準化なのです。
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