メルマガ「DXナビゲーション」バックナンバー:第17号 在庫の適正化〜在庫管理における課題を解決するには〜(1/2)

在庫の適正化〜在庫管理における課題を解決するには〜(1/2)
在庫は生産活動を評価するものさし
「在庫は生産活動を評価するものさしである」という言葉があります。在庫が企業の生産効率や需要に対する適応力を示す重要な指標であることを意味しています。
在庫の量や種類は生産計画や販売戦略に密接に関連しており、企業の全体的なパフォーマンスを評価する上での重要な要素とも言えます。在庫が適切に維持されていれば、生産計画や販売戦略が成功している証拠と考えられます。需要の変動に迅速に対応でき、無駄なコストを抑えることができます。逆に在庫が過剰または不足している場合は、生産プロセスに何らかの問題があることを示唆しています。在庫が過剰であればコストが増加し、逆に不足していれば販売機会を逃すことになります。このように、在庫は生産活動の健全性を評価する上での重要な指標となり、在庫管理は企業の競争力を維持するために非常に重要です。

在庫に対する考え方の変遷
在庫に対する評価や考え方は時代とともに進化し続けています。特に昨今では、IT技術の進展により、在庫管理のデジタル化や自動化が進んでいます。在庫管理をシステム化し、できるだけ人の都合や思惑を介在させないような仕組みを作ることが必要です。人が介在するから、 在庫問題が難しくなるのです。
IoTやAIを活用することで、在庫のリアルタイム管理や予測が可能になり、効率的な運用が実現されています。また、持続可能性や環境への配慮が企業の在庫管理に影響を与えています。過剰在庫は廃棄物を生む原因となるため、エコフレンドリーな在庫管理が求められています。グローバル化が進む中で、サプライチェーン全体の最適化が重要視されるようになり、在庫の配置や流通経路が見直しされていることも然りです。このように、在庫に関する考え方は、今後も新たな技術や市場の変化に応じて変わっていくでしょう。

そもそも現場がうまく在庫管理ができないはなぜでしょう?
社長や工場長による「とにかく在庫を減らそう」というスローガンをよく耳にしますが、単に責任を追及しているだけで、在庫が増えている本当の原因を突き止めないままでは掛け声だおれに終わってしまうことがあります。これには、つぎのような理由が考えられます。
(1)現場の担当者任せの管理
なぜ在庫を管理しなければならないのかが、全社員で共有できていません。「受注精度が悪いから在庫が必要だ」「生産リードタイムが長いのだから在庫が必要だ」「欠品して怒られるよりは、 在庫をなるべくたくさん用意したほうが安心だ」「まとめて生産した方が安い」と部門の都合を優先するばかり(部分最適)。誰も全社在庫を管理していない状態です。
(2)モノの“2S3定”ができていないので、在庫が見えない
現場がモノだらけで、好き勝手な置き方をしていては、不動在庫に気づかない・在庫を気にしない、となりがちです。期末に棚卸をすればよいという意識を持っていては日常管理が疎かになってしまいます。
(3)日常の入出庫管理ができていない
入出庫数、在庫数がリアルタイムで把握できていない・可視化できていない状態です。担当者の過去の経験や勘に基づいて手作業で需給計画を⽴てていて(属人化)、最新の状況にあった正確な予想や適切な在庫計画ができていません。
(4)適正在庫の基準やそれを維持する方法がわからない
適正在庫量を判断する全社的な基準がなく担当者個々がバラバラの水準になっています。欠品が怖いため前任者の設定を何の疑いもなくそのまま継続していることもあります。適正在庫の可否を判断できるに足るデータが取れていない状態です。
適正在庫とは?
ここで上記(4)で挙げた適正在庫について考えてみましょう。原材料在庫があれば、原材料調達のリードタイムなしで生産に取りかかることができます。仕掛品在庫があれば、製造リードタイムを短縮することができます。製品在庫があれば、製造リードタイムなしに即納できます。したがって、工場で何らかのトラブルが発生した時の危機回避のために、ある一定数の在庫を持つことが行われてきました。しかし、現在では、ITの力を駆使して、需要予測の精度を高めたり、リアルタイムで市場の動きを分析することが可能になっていますので、在庫をできるだけ減らしつつ、需要変動に迅速かつ的確に対応することが必要不可欠となります。在庫は多すぎても、少なすぎても困るものであり、いかに過不足なく在庫(適正在庫)を確保し、効率的に顧客に販売できるかが企業の利益に直結します。利益を最大化し、健全な企業経営を行うために適正在庫を保つことは重要な課題です。
適正在庫算出の注意点
適正在庫を算出するための算出方法には以下の4つがあります。
・安全在庫とサイクル在庫から計算
・需要数から計算
・在庫回転率と在庫回転日数から計算
・交叉比率から計算
ここでは算出方法の詳細は省略しますが、算出するにあたっては、以下のように注意すべき点がいくつかあります。これらを考慮しないと、適正在庫を求めている意味がなくなったり、不十分な予測になってしまう場合があります。定期的に在庫データを分析し、算出モデルを見直すことが適正在庫の維持につながります。データに基づいた意思決定が在庫管理を最適化するのです。

次回は、紙や表計算ソフトによる在庫管理に代えてシステム化することの重要性、リードタイム短縮が在庫削減の有効策である点などについてご説明させていただきます。
コメント