メルマガバックナンバー:第7号 社長の「あとはよろしく!」の落とし穴
生産管理システムの導入に対する従業員の抵抗は自然な反応
前号で、「管理力」がものを言う時代になって、生産管理システムは不可欠な時代になっていることをご説明しました。生産管理システムは、生産プロセスを効率的に管理するためのツールですが、その効果を最大化するには現場の実務やプロセスを正確に理解し、システムに適用する必要があります。現場の従業員がシステムの仕様や操作方法を理解し、実際の作業に反映させるためには、彼らの協力が欠かせません。
しかし、お客様のところを訪問すると、「現場の従業員が自分たちの仕事が大幅に変わることへの抵抗があるようです。どうすれば良いでしょうか?」 という話をよく聞きます。生産管理システムの導入は社内改革の一環であり、従業員の抵抗は自然な反応だと言えます。「生産管理システムなど自分達には必要ない」、「Excelで十分だ」「導入したら自分の仕事がなくなる」、「今まで人手で作業していても何も問題はなかったのに…」等々の従業員の意識、態度はごく当たり前のことです。業務のプロセスが変わって一時的に現場の負担が増えるかもしれませんが、従業員に導入の目的とそれによって実現されるメリット(従業員と会社の双方のメリット)を社長自らが明確に根気強く伝えることが重要です。
社長として何より大切なのは、5〜10 年先に、どのような ”モノづくり経営” をしたいのか、そのイメージを具体的に描くことです。理想像を描き、全社一丸となってそこに向かって命がけで進めていくという気迫がなければ、生産管理システムの導入は成功しません。導入したら自分の役割はおしまいで、「あとはよろしく!」という姿勢では、生産管理システムの導入は決して成功しません。
いざ生産管理システムを導入したものの
いざ生産管理システムを導入しても、現場の人間は「社長が勝手に買ったシステムだから」「システムが悪い」「使い勝手が悪い」とか言って、本来入力しなければならない項目を入力せずにやり過ごしてしまっていることがあります。手抜きしながら、ああだこうだと使えない理由ばかり並べ立てます。これではまともな運用はできません。
また、「カスタマイズしないと使えない!」という声を聞くことがあります。これもおかしな話しです。多少使い勝手が悪いシステムでも(語弊があるかもしれませんが)、それなりのシステムであれば、カスタマイズなしでシステムに合わせて運用する方が上手くいくケースが多いのです。下手にカスタマイズして、継ぎはぎだらけのシステムになり、結果的に担当者しか使えなくなってしまった(属人化)という例をよく耳にします。
自社にマッチしたシステムであることが大前提ですが、いったん導入したら、ともかく運用あるのみです。どんどん使いこなしていくことです。システムが根付くまで1〜2年かかることがありますが、プロジェクトチームなどを組んで、根気強く土壌整備(企業風土の改革)から始めます。もしどうしてもカスタマイズが必要なら、ある程度使いこなした時点で検討するのが良いでしょう。はじめから、「あの機能も」「この機能も」と言っていては、いつまで経っても腰を据えてシステムを運用することができません。
全社一丸となって生産管理システム導入に取り組むポイントは
工場の現場、間接部門、そして営業の全社員が生産管理システム導入の重要性や目的を理解し、情報を共有して、目標に向かって一致団結することが重要です。社長が目標を明確にし、その実現に向けた利点を説明することで、全員が取り組む意欲を高めます。具体的には、以下のような点が重要になってきます。
生産管理システムは、”魔法の杖” の如く、導入すればすぐに課題を解決できるという安易な考えでは、ものになりません。経営者、管理者、従業員が一体となって創意工夫を図りつつ、使い込んでいかなければ効果は出ません。既存の組織文化やプロセスに変更を加えることは、従業員や組織の一部に抵抗を引き起こす可能性があります。下手をすると、生産管理部門のみならず、製造、営業、購買、管理等の部門が大混乱するばかりということにも陥りかねません。
生産管理システムは、今後の中小製造業の社運を左右するシステムと言っても過言ではないし、システムの導入は組織内での変革を意味します。社長は変革を受け入れる土壌を社内で醸成し、従業員の支援とトレーニングに積極的に関与しなければなりません。
社長は「あとはよろしく!」ではなく、生産管理システム導入の進捗と成果を定期的にモニタリングし、目標の達成状況を評価し、必要に応じて各人、各部門の調整を行い、システム導入の成功を確かなものにする責任があります。まさに、社長自らが腹を括って徹底的に当たらねば、生産管理システムの導入は成功しないということです。中小製造業において生産管理システムの導入を進めていく上では、社長の役割は極めて重要です。
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