メルマガ「DXナビゲーション」バックナンバー:第20号 中小製造業の取得120者余り、DX認定制度とは? メリットと取得のポイント(1/2)

DX認定制度とは?
DXへの積極的な取り組みを促進するために、政府はあらゆる施策を行なってきました。そのなかの一つである「DX認定制度」(情報処理の促進に関する法律第三十一条に基づく認定制度)をご存じでしょうか。DX認定制度は、デジタル技術による社会変革に対して経営者に求められる事項を取りまとめた「デジタルガバナンス・コード」に対応し、DX推進の準備が整っていると認められた企業を国が認定する制度です。認定事業者は「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態」とされ、自社をアピールしたり、公的な支援措置を受けることができます。独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)が、本制度に関わる「DX認定制度事務局」として、各種相談・問い合わせ対応及び認定審査事務を行っています。
本メールマガジンでは今号と次号の2回に分けて、経済産業省の資料とIPAの資料をもとに、DX認定制度を受けることのメリットや、認定を受けるために必要な取り組みについてご説明します。今後ますます加速するDX社会で競争力を高めるためにも、DX認定制度について理解を深めていただければと思います。
DX認定取得事業者、中小企業は548者に過ぎない
直近1年間(2024年10月時点)の全認定事業者数は約1.5倍(822者→1,205者)で伸びており、特に中小企業等では約2.0倍(281者→548者)と全認定事業者数の増加を牽引していることから、中小企業等においても本制度やDX推進の取組みが広がっています。
また、業種別では情報通信業(全体の23.0%)や製造業(同22.5%)での取得割合が高い傾向にありますが、様々な業種で取得が広がっています。おります。
上記の認定企業数と業種別の取得割合から推測すると、現在、中小企業の製造業のDX認定取得企業はわずか120者ほどと考えられます。この数字をもってして考えれば、DX認定を他者に先駆けて取得することのメリットがいかに大きいか、おわかりいただけるのではないでしょうか?

また、経済産業省が2024年9月に行なったDX認定制度の認定事業者に対するアンケートでは、約80%の認定事業者がDX戦略の推進に効果があった(アンケートへ回答協力した認定事業者での割合)と考えており、その他、顧客との関係、人材の育成・確保でも良い効果があったと実感しています。

DX認定制度のレベル感は?
DX認定は、DX-Readyの状態、つまり「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態」というレベル感です。
DX-Readyとは、「経営者が、デジタル技術を用いたデータ活用によって自社をどのように変革させるかを明確にし、実現に向けた戦略をつくるとともに、企業全体として、必要となる組織や人材を明らかにした上で、ITシステムの整備に向けた方策を示し、さらには戦略推進状況を管理する準備ができている状態」を意味します。
このような準備の状況を、公表媒体により対外的に示されていることを提示することで、DX認定の適用となります。そのため、例えば、DXに関する顧客向けの特定サービスやITシステムを提供していたとしても、それだけでDX認定となるものではありません。

DX認定を取得するメリット
DX認定を取得するメリットとしては、次の5つが挙げられます。DX認定事業者は、IPAのホームページで公表されると共に、「DXに積極的に取り組んでいる企業」であることをPRするためのロゴマークが使え、社会的信用や企業価値の向上が期待できます。また、各種支援措置を受けることが可能となります。
1.DX推進における自社の課題が浮き彫りになる
DX認定を取得する最大のメリットとも言えることは、認定取得の過程において各取り組み項目をチェックする中で(DX認定制度 申請チェックシート)、自社がDXを推進する上でどのような課題を抱えているのかが浮き彫りになることです。経営層から管理・監督者、現場担当者まで社内全体が課題を共有し、意識改善を図る土壌が形成できます。
2.一覧への公表やDX認定ロゴマークの使用で企業価値や社会的認知度が高まる
DX認定を取得した事業者は、IPAの「DX認定制度 認定事業者の一覧」に掲載されます。そのため、DXに積極的に取り組んでいる企業として、企業価値や社会的認知度、ブランドイメージの向上に貢献できます。また、DX認定ロゴマークを自社のWebサイトやパンフレット、名刺に使うことができますので、DX推進の取り組みをアピールできます。

3.中小企業を対象とした金融支援措置を受けることができる
日本政策金融公庫による金利優遇と中小企業信用保険法の特例により、融資を受けやすくなります。
3-1.日本政策金融公庫による金利優遇
DX認定を受けた中小企業者が行う設備投資等に必要な資金について、基準利率よりも低い特別利率で融資を受けることができます。
3-2.中小企業信用保険法の特例
DX認定を受けた中小企業者が、情報処理システムを良好な状態に維持し、戦略的に利用するために必要となる設備資金等について、民間金融機関から融資を受ける際、信用保証協会による信用保証のうち、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が受けられます。
4.人材育成のための訓練に対する支援措置(人材開発支援助成金)を受けることができる
DX認定を受けた事業者は高度デジタル人材訓練の対象事業主としての要件を満たし、訓練経費(最大75%)や訓練期間中の賃金の一部(最大960円/時間)等について助成を受けることができます。詳細は、こちらをご覧ください。
5.DX銘柄及びDXセレクションへの応募が可能となる
DX銘柄の選定対象として、DX認定の取得が必須となります(上場企業)。また、DX認定を取得することで、DXセレクションへの自薦での応募が可能となります(中堅・中小企業等)。
認定基準(デジタルガバナンス・コード)の改定 2.0から3.0へ
経済産業省では、2024年6月に「企業価値向上に向けたデジタル・ガバナンス検討会」を開催し、同検討会の議論の結果を踏まえ、改訂版の「デジタルガバナンス・コード3.0」を公表しました。
DX認定制度についても「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営における企業価値向上に向けて~」で定められた新基準に基づく運用を2024年12月から開始しています。
次号では、申請に向けてどのような準備をしなければならないのかについてご説明したいと思います。
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