【KAIZEN三四郎ものづくり道場】不良ゼロを実現する!品質管理 徹底講座 連載第1回:「品質とは何か」─ 顧客満足を生む「設計品質」と「製造品質」

日本の現場に根づくTQC(全社的品質管理)の精神と最新のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を融合し、“不良ゼロ”を目指す品質管理講座シリーズです。
この連載では、製造業の品質管理で最も大切な「基本のキ」から、実践的なコスト削減の仕組みまでを、ベテランコンサルタントKAIZEN三四郎が丁寧に解説します。経験の浅い方も、長年現場にいる方も、この機会に品質管理の「基礎」を徹底的に学び直し、不良ゼロへの土台を固めましょう!


製造現場で「いつも検査でバタバタしている」製造リーダー/現場担当者へ

 「うちは検査でなんとかしている」──そうした声は、どこの工場でも聞かれます。
 しかし、検査では品質はつくれません。
 真の品質は、“後で直す”のではなく、“最初からつくり込む”こと。
その基本を知らずに改善を進めても、効果は一時的です。
 本連載では、品質の本質を改めて見直し、現場が変わる“真の品質づくり”の考え方を学びます。
「品質=良いもの」ではない?本当の「品質」の意味を知ろう
ツクル君: 三四郎さん、今日から品質管理について教えていただくことになりました!第1回は「品質とは何か」ですが、品質って、やっぱり「良いこと」ですよね?高機能で、丈夫で、精密なもの、という意味で。
KAIZEN三四郎: うむ、そうじゃな。一般的には「優れていること」という意味で使われることが多い。じゃが、ものづくりの世界で語られる「品質」とは、単に「良いもの」という意味だけではないんじゃ。品質とは、「顧客や社会の要求事項を満たしている度合い」のことじゃよ。
ツクル君: 「要求を満たしている度合い」…ですか。どういうことでしょう?最高の技術を使って作ったものが、必ずしも最高の品質とは限らない、ということですか?
KAIZEN三四郎: その通り!実はこの定義は、品質マネジメントシステムの国際規格である「ISO 9000」シリーズでも中核となっている考え方なんじゃ。ISO 9000では「品質」を『対象に本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たしている程度』と定めている。つまり、私たちが今話している「顧客の要求」とは、この規格が最も重要視していることなんじゃ。

ツクル君: なるほど、世界基準なんですね!要求に備わる「特性」…つまり、機能や耐久性といった項目すべてで、要求が満たされている必要があるわけですね。
KAIZEN三四郎: その通り!例えば、君が「丈夫で長持ちする」作業靴を求めて、5万円のブーツを買ったとする。しかし、そのブーツが半年で底が剥がれたら、君にとっては品質が低いと感じるじゃろ?いくらデザインが良くても、要求(丈夫さ)を満たしていないからな。
ツクル君: 確かに。すごく不満に思います。
KAIZEN三四郎: 逆に、ホームセンターで買った1,000円のビニールカッパがある。これは「安くて、雨の日の数時間使えればそれで構わない」という要求に応えるものじゃ。もし、価格に見合わずしっかり雨を防いでくれたなら、それは君にとって品質が高いと言える。
ツクル君: なるほど!求められる価格帯や用途に対して、ちゃんと役目を果たしているかどうかが重要なんですね。誰の、何の要求に応えているかを常に意識しないと、顧客満足は得られない、と。
KAIZEN三四郎: まさにその通り。品質管理とは、この要求水準を的確に把握し、製品がその水準を確実に満たすようにコントロールすることなんじゃ。
品質を支える二本柱「設計品質」と「製造品質」

KAIZEN三四郎: この顧客の要求に応える「品質」は、製品が出来上がるまでに、大きく分けて二つの段階で決まるんじゃ。これが「設計品質」と「製造品質」じゃ。この二つが車の両輪のように機能して、初めて顧客の手に渡る製品の品質が定まるんじゃよ。
設計品質とは? ねらいの品質
ツクル君: 設計品質とは、製品の企画・設計の段階で決まる品質のことですよね?
KAIZEN三四郎: うむ。設計品質とは、「その製品が、本来どれくらいの性能や機能、耐久性を持ち、どの程度のグレードを目指すのか」という、ねらいの品質のことじゃ。市場調査やマーケティングの結果を基に、顧客の潜在的な要求までを見越して設定する、いわば品質の目標値じゃな。
ツクル君: 例えば、冷蔵庫を設計する場合、どのくらい静音にするか、何年故障しない耐久性を持たせるか、ということですか?
KAIZEN三四郎: そうじゃ。同じ冷蔵庫でも、「単身者向けの低価格モデル」として設計するのと、「大家族向けの高級省エネモデル」として設計するのとでは、目標とする性能、使用部品、寿命の長さが全く違うじゃろ?この企画・設計段階で決定された品質のレベルそのものが設計品質じゃ。
ツクル君: 設計品質が高すぎると、高性能になりすぎてコストがかかりすぎますし、逆に低すぎると顧客の要求を満たせず売れない…。設計部門の責任は重大ですね。
KAIZEN三四郎: その通り!設計品質が顧客の要求を的確に捉え、適切なコストレベルで設定されているかが、ビジネスとしての勝負の分かれ目じゃ。
製造品質とは? 出来ばえの品質
ツクル君: では、製造品質は、その設計図をいかに実現するか、ということですね?
KAIZEN三四郎: その通り。製造品質とは、「設計品質(図面や仕様書)で決められた通りのものを、どれだけ正確につくれたか」という、出来ばえの品質のことじゃ。現場の技能や、設備の精度、管理体制によって左右される。
ツクル君: どんなに良い設計図(設計品質)があっても、現場で作業ミスや寸法誤差が出てしまっては、設計者の意図した製品にはならないわけですね。
KAIZEN三四郎: うむ。例えば、高級時計のムーブメントを図面通りに設計しても、製造現場で部品の寸法誤差が出たり、異物混入があったりすれば、それは設計品質を達成していない、「製造品質が悪い」ということになる。製造品質は主に、バラツキの少なさや、設計要求を満たす製品の割合(歩留まり)で評価されるんじゃ。
ツクル君: 設計品質で「ゴール」を定め、製造品質でそのゴールに「どれだけ正確にボールを蹴り込めたか」ってことですね!
KAIZEN三四郎: うむ、そして、この「バラツキ」を捉えるために、ものづくりでは「品質特性(Quality Characteristics)」という考え方を使うんじゃ。品質特性とは、その製品の品質レベルを表すために測定・評価する項目、つまり図面上の「寸法公差」や「硬度」「表面粗さ」といった、数値で表現できる特性のことじゃ。
ツクル君: ああ、いつも図面で見る、あの「±0.1mm」とかの公差のことですね!
KAIZEN三四郎: そうじゃ。製造現場の品質管理とは、まさにこの品質特性が、設計者が定めた許容範囲(公差)を逸脱しないよう、そのバラツキを最小限に抑え、管理することに尽きるんじゃ。このバラツキを視覚的に管理するための手法が「管理図」などの統計的品質管理(SQC)手法に繋がっていくんじゃよ。

ツクル君: なるほど…!ただ不良品を弾くだけじゃなく、公差内で常に安定して製品を作るための仕組み、それが製造品質の管理なんですね!設計品質で定めたゴールに、製造品質で正確にボールを蹴り込む。この二つの品質を高いレベルで両立させることが、ものづくりの第一歩なんですね!
KAIZEN三四郎: よくぞ理解した!この二つの品質を分けて考えることで、問題が「設計ミス」にあるのか、それとも「製造現場の管理不足」にあるのかを明確にできるんじゃ。次回は、この品質を良くするためのコストの考え方について、さらに深く学んでいくぞ!
【今日のKAIZEN三四郎の教え】品質の真髄と二つの責任
次回は「品質とコストの真実」ー品質を上げるほどコストが下がる、“逆転の法則”、に迫ります!

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