【KAIZEN三四郎ものづくり道場】不良ゼロを実現する!品質管理 徹底講座(連載:全3回+番外編)〜現場を変える日本式TQC×DXによる品質経営〜

はじめに:「品質改善はコストがかかる」はもう古い

 「うちは検査でなんとかしている」「不良は仕方がない。一定数は出るものだ」——そんな声を現場でよく耳にします。

 しかし、この“常識”こそが、品質問題の根っこにあります。トヨタ生産方式をはじめとする日本的なTQC(全社的品質管理)の真髄は、まさにその常識を覆す考え方にあります。

 品質は検査でつくるものではありません。品質は、工程の中でつくり込むものです。検査とは、あくまで“結果の確認”にすぎません。どれだけ厳しい検査をしても、後工程での手直しや廃棄が発生してしまえば、本当の意味での「品質経営」にはなりません。真の品質は、不良を流さない仕組みづくりと、異常を即座に見抜く現場力によって生まれます。

 つまり、「品質づくりの主役」は検査員ではなく、現場そのものです。不良を未然に防ぎ、工程そのものに“品質を埋め込む”仕組みを築くこと——。それこそが日本のものづくりが世界で信頼されてきた源泉であり、今、再び見直されるべき“現場発”の経営哲学なのです。

 本講座では、その原点に立ち返りながら、品質管理の基礎思想から、現場で活かせる実践的なTQC手法、さらには最新のDX活用法までを、ベテランコンサルタント KAIZEN三四郎 と若手技術者 ツクル君 の対話形式でわかりやすく解説します。

第1回:品質とは何か? ─ 顧客満足を生む「設計品質」と「製造品質」

「良いモノ」とは何かを定義できなければ、良い製品は生まれません。
顧客の“期待値”を理解することから、品質経営は始まります。

品質の定義: 品質とは、「顧客や社会の要求事項を満たしている度合い」である 。単なる高機能ではなく、価格帯や用途に対して役目を果たすことの重要性を理解する 。
設計品質(ねらいの品質): 企画・設計段階で決定される、目指すべき性能やグレードの目標値 。このレベルが適切かどうかがビジネスの勝負を決める 。
製造品質(出来ばえの品質: 設計図通りに、どれだけ正確につくれたかという出来ばえの品質 。バラツキの少なさや歩留まりで評価される 。

第2回:品質とコストの真実! ー 不良削減がコストを下げる“逆転の法則”

「品質を上げればコストも上がる」——それはもう過去の常識。
不良を減らせば、コストは必ず下がる。TQCが示す“逆転の法則”を解き明かします。

不良の概念と公差: 不良とは「設計された仕様(公差の範囲)を満たしていない製品」であると定義する 。
トレードオフの誤解: 品質を上げれば必ずコストが上がるという従来の考え方を否定 。不良による手直し、廃棄、クレーム対応といったムダな失敗コスト が、品質向上によって劇的に減ることを理解する 。
品質コストの伝統的な分類
予防コスト:不良を未然に防ぐための教育やシステム構築への投資 。
失敗コスト(内部・外部):火消しに使う費用 。TQCでは予防コストに重点を置き、失敗コストをゼロに近づけることを目指す 。

第3回:不良ゼロへの挑戦! ー 「ひもスイッチ」と「自働化」で品質をつくり込む

不良を“検出”するのではなく、“発生させない”。
トヨタ流「ひもスイッチ」と「自働化」に学ぶ、品質づくりの真髄を現場で実践します。

品質の「つくり込み」と「ひもスイッチ」という考え方・仕組み: 検査に頼らず 、「不良品は後工程へ流さない」という意識を持ち 、異常を発見したらラインを止めるという基本原則を徹底する 。
5Sの徹底(見える化の土台): 整理・整頓・清掃・清潔・躾 を徹底することで、現場を標準的な状態に保ち、異常がすぐに浮き立つ「問題の見える化」 を実現する。
自働化(ニンベン付き)とポカヨケ: 単なる自動化でなく、機械が不良を感知したら自動で停止し、人間に問題解決と工夫を促す「自働化」の思想。また、作業ミス(ポカ)を防ぐ仕組み「ポカヨケ」の活用。
「なぜ」を繰り返して真因を発見: 不良の根本原因を突き止めるため、「なぜ」を5回繰り返す というトヨタ流の思考法を身につける。
標準化とPDCAサイクル「標準なきところに改善なし」 という基本原則に基づき、標準(Plan)を定め、実行(Do)・検証(Check)し、改善(Action)に応じて標準を改訂 していくPDCAを回し続ける。

番外編:品質を経営戦略にするDX活用術 ─ データが導く次世代TQC

品質データは、現場改善の“羅針盤”。
TQCの思想をデジタルで進化させ、経営判断のスピードと精度を劇的に高めます。

品質データは「宝の山」: 検査データや作業ログをつなげ、現場のムダの発生源を浮き彫りにする 。
データで「真因追究」が加速: 勘と経験だけでなく、データ分析で相関関係を明確にし、迅速な改善を可能にする 。
リアルタイム品質経営: クラウドで品質情報を共有し、経営者・管理者・現場が同じデータを見て、共通の言葉で話す。品質を会社の“健康診断データ”として活用する 。

シリーズを通して得られること

・「品質とは何か?」を現場と経営の両視点で深く理解できる 。
・不良ゼロをめざすTQCの実践手法と、それを支える標準化・5Sを学べる 。
・品質改善をコスト削減と経営の柱に変えるDX活用の方向性をつかめる 。

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