【世界標準の知識を!】生産管理・SCMの国際資格APICSとは?グローバル競争を勝ち抜くための共通言語

はじめに:グローバル時代に必須となる「全体最適」の視点

 以前生産管理の資格に関する記事を書いたときに、APICSという国際資格についても皆さんの関心が高かったので、今回は、改めてAPICSについて詳しくご説明いたします。

 市場のニーズの多様化、国際的なサプライヤーとの連携、そしてDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進といった変化の中で、従来の拠点や部門ごとの「部分最適」の管理手法では、もはや企業の競争力を維持することは困難です。

 原料調達から最終顧客に至るまでのサプライチェーン全体を見渡し、情報共有と協働を通じて「全体最適」を図るスキルと知識が、世界的に強く求められています。この課題を解決し、グローバルで通用する共通認識と体系的な知識を提供するのが、APICS(エーピックス)という国際資格です。

APICSとは?世界で活用されるSCMの「事実上の標準」

 APICSとは、サプライチェーンマネジメント(SCM)に関する知識体系を認定する国際的な専門資格のブランド名です。サプライチェーンマネジメントの国際団体であるASCM(Association for Supply Chain Management)が提供・運営しています。

世界共通の「SCM言語」としてのAPICS

・APICSの教材と知識体系は、需要予測、生産計画、在庫管理、ロジスティクス、販売と運営計画(S&OP)といったSCMの広範な領域を、国際的に通用するフレームワークで網羅しています。
・インテル、GE、エリクソン、BASFなど、多くのグローバル企業がこの資格と教材を人材育成に活用しており、世界中で14万人以上が資格を保有しています。
・国境を越えた事業展開や、海外のサプライヤー・顧客との円滑な連携において、共通の専門用語と概念(SCM英語)を共有できるAPICSの知識は、「事実上の標準言語」として機能します。

知識の源流に流れる「全体最適」の思想

 APICSの知識は、単なる専門用語集ではありません。その背景には、生産管理におけるMRPERPの発展思想につながる、一貫した「全体最適」の思想があります。個別企業の最適ではなく、サプライチェーン全体の視点から、情報やリソースを最大活用するという理念に基づいています。

主要なAPICS資格と得られる体系的な知識

 APICSの資格は、対象とする知識領域によって複数の種類があります。ここでは代表的な2つを紹介します。

APICS資格を取得するメリット

この国際資格を取得することは、個人のキャリアアップと企業経営の両方に大きなメリットをもたらします。

  1. 知識の体系化と標準化: 自身の業務経験や断片的な知識を、国際的に通用するフレームワークで整理し直すことができます。
  2. グローバルなコミュニケーション能力向上: 世界共通の専門用語と概念を習得することで、海外拠点やサプライヤーとの連携、および高度なSCMシステム導入時のベンダーとの議論がスムーズになります。
  3. 部分最適からの脱却: 広範で網羅的な知識を学ぶことで、常に企業全体、サプライチェーン全体での最適を意識する視点が身につき、マネジメント層としての能力が向上します。
  4. 市場価値の向上: グローバル企業の間で高い認知度を持つ資格は、SCMのプロフェッショナルとしての市場価値とキャリアの機会を広げます。

「2019年版ものづくり白書」でもAPICSについて掲載されました

 APICSの重要性は、政府発行の文書でも言及されています。「2019年版ものづくり白書」に、APICSが「グローバルに活用される世界共通のサプライチェーンマネジメント資格」としてコラムで取り上げられました。(「第1部 第2章 第3節 174ページ」に掲載)

 その一部を引用し、改めてAPICSが日本企業にもたらす価値を確認しましょう。

まとめ:世界標準の知識でグローバル競争力を手に入れる

 APICSは、単なる知識を問う資格ではありません。グローバルサプライチェーン時代を勝ち抜くために、企業が持つべき生産管理・SCMの共通言語であり、全体最適を実現するための思考の枠組みです。

 国際的な知識を習得し、それを日々の業務やシステムの運用に活かすことが、企業の持続的な成長と競争力強化の鍵となります。

 知識を「共通言語」として活用するには、その知識を最大限に引き出すためのシステム基盤と、全体最適を実現するための具体的なプロセス設計が不可欠です。

 ぜひ、貴社の生産管理・SCM体制強化に向けた具体的な一歩を踏み出してください。

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