【徹底解説】採択率3割時代を勝ち抜く! IT導入補助金2025(通常枠)の「合格の秘訣」は加点項目にあり!

はじめに:知らないと損をする加点項目

 2025年度に入り、IT導入補助金(通常枠)の採択率は激減しています。第1次公募の50.7%から始まり、第2次公募では41.1%、そして9月2日に発表になった第3次公募ではついに30.4%まで低下しました。

 この厳しい競争を勝ち抜くには、従来のまま申請に臨んだのでは不十分です。多くの企業が不採択となる中で、ライバルと差をつけ、合格を確実にするための「鍵」が、公募要領に記載されている「加点項目」にあります。加点項目なしでの採択は一層難しくなっています。加点項目を満たすことで、他の申請者との差別化を図り、審査で有利な評価を受ける必要があります。

 また、加点項目は、単に補助金の審査基準というだけでなく、事業者のIT化への意欲や社会的な課題への取り組み姿勢を示す指標でもあります。たとえば、賃上げ計画や健康経営への取り組み、セキュリティ対策などは、国が推進する政策とも合致する項目です。これらの項目をクリアすることで、補助金の目的に沿った事業計画であると評価されやすくなります。

 今回は、この加点項目(通常枠)を徹底的に掘り下げ、皆さんの申請が合格に一歩近づくための戦略をお伝えします。

具体的な加点項目は?

 加点項目について、「うちの会社でも申請できるの?」「できるだけ採択されやすくしたいけど、何を準備すればいいの?」と感じている経営者の方も多いはず。本稿では、まず、通常枠の加点項目全体について、要件をわかりやすく整理していきたいと思います。

地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認取得

 地域未来投資促進法は、地域の特性を活用した事業の生み出す経済的波及効果に着目し、これを最大化しようとする地方公共団体の取り組みを応援するものです。地方公共団体が策定した基本計画に基づき、事業者が策定する地域経済牽引事業計画を、都道府県が承認している場合、審査の加点となります。

地域未来牽引企業への選定および目標の提出

 交付申請時点で地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出していることが必要です。
 「地域未来牽引企業」とは、経済産業省において、地域未来投資促進法における地域経済牽引事業の担い手の候補として、これまでに全国で4,700の企業や団体を選定。選定された「地域未来牽引企業」は、地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果をおよぼすことにより地域の経済成長を力強く牽引する事業を更に積極的に展開されること、または、今後取り組まれることが期待されています。

クラウドを利用したITツール導入の検討

 導入するITツールとしてクラウド製品が選定されている場合、加点の対象となります。
 2018年6月7日に各府省庁情報化統括責任者(CIO)連絡会議で決定された「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」のクラウド・バイ・デフォルト原則に基づき、クラウドツールの導入を促しています。

インボイス対応ITツール導入の検討

導入するITツールとしてインボイス対応製品が選定されている場合、加点の対象となります。

賃上げの事業計画の策定、従業員への表明、事業計画の達成

 事業計画期間において、以下各枠ごとの要件をすべて満たす3年の事業計画を策定し、従業員に表明するとともに、策定した事業計画を達成する必要があります。

 ※なお、申請時に上記賃金引上げ計画を従業員に表明し、事業計画を達成したと申告したにもかかわらず、交付後に、実際には表明していないことが発覚した場合、事務局は、交付決定を取り消します。

通常枠:1〜3プロセス

・事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること。
・事業計画期間において、給与支給総額※を年平均成長率1.5%以上向上。

 ※なお、事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+50円以上の水準にした場合、更なる加点を行う。

 給与支給総額とは、全従業員(非常勤を含む)および役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与および役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)を指します。

通常枠:4プロセス以上

・事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+50円以上の水準にすること。

 ※なお、効果報告前および賃上げ目標に定められた要件の達成状況判定前に辞退した場合、賃上げ目標の要件未達成とみなされ補助金の全額返還となります。

国の推進するセキュリティサービスを選定していること

 導入するITツールに、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているITツールが含まれていること。

IT戦略ナビwithの実施

 中小機構が運営するデジタル化支援ポータルサイト「デジwith」における「IT戦略ナビwith」を交付申請前に行っている場合、加点の対象となります。「IT戦略ナビwith」実施時に、本事業の申請に用いたGビズIDプライムを入力し、結果が表示された画面を交付申請時に添付することが必要です。

健康経営優良法人2025の認定取得

 令和6年度に「健康経営法人2025」に認定された事業者であること。
 健康経営優良法人とは、経済産業省が推進する健康経営に関し、特に優良な取り組みを実践しているとして日本健康会議※が認定する法人を指します。健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することを指します。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されています。
 ※日本健康会議とは、国民一人ひとりの健康寿命延伸と適正な医療について官民連携により職場や地域で具体的な対応策を実現していくために組織された活動体を指します。

くるみん・えるぼし認定取得

 交付申請時点で、以下のいずれかに該当すること。
・女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定(えるぼし1段階目~3段階目またはプラチナえるぼしのいずれかの認定)を受けている者
・次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく認定(くるみん、トライくるみんまたはプラチナくるみんのいずれかの認定。)を受けた者

成長加速マッチングサービスへの登録

 交付申請締切日時点において、中小企業庁「成長加速マッチングサービス」で会員登録を行い、挑戦課題を登録していること。
 ※登録されている課題のステータスが「掲載中」となっている課題を確認できた場合のみ加点を行う。

各加点項目の取得難易度は

 IT導入補助金2025の通常枠の加点項目について、申請者である中小企業が押さえるべき項目はどれなのか、一般的な取得難易度を3段階に分けて、ご説明していきたいと思います。

 なお、本記事で示す加点項目の取得難易度は、これまでの弊社の申請支援実績に基づいた独自の見解により3段階に分けてご紹介するものです。各企業の状況によって、難易度は変動する可能性がありますので、あくまでもご参考としてお読みください。

比較的取得しやすい項目

これらの項目は、多くの企業が比較的容易に対応できるものです。

クラウドを利用したITツール導入の検討: 導入するITツールがクラウド型である場合、自動的に加点されます。現在、多くのITツールがクラウド形式で提供されているため、意識的に選定すれば加点を得やすい項目です。

インボイス対応ITツール導入の検討:多くの企業が対応を迫られているインボイス制度に対応したITツールを導入することで加点されます。すでにインボイス対応を検討している企業にとっては、追加の負担なく加点を狙えます。

国の推進するセキュリティサービスを選定していること:「サイバーセキュリティお助け隊サービス」とは、中小企業のサイバーセキュリティ対策を支援するための相談窓口、異常の監視、事案発生時の初動対応(駆付け支援等)及び簡易サイバー保険を含む各種サービスを、安価かつ効果的なワンパッケージで、確実に提供するものです。
 「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が制定した「サイバーセキュリティお助け隊サービス基準」を充足することを、お助け隊サービス審査登録機関により確認されたサービスを掲載したリストを指します。
 通常枠では、「サイバーセキュリティお助け隊サービス」単体ではなく、オプションとして、メインツールと組み合わせて申請する必要がありますので、留意が必要です。

IT戦略ナビwith の実施:2025年新設の加点項目です。IT戦略ナビwithのサイトから無料診断ツール『IT戦略マップ』を作成して、補助金申請時にPDF形式で添付するだけで加点となります。5分程度で自社の経営課題やIT導入の方向性を「見える化」できます。手軽に完了できるため、必ず実施すべき項目です。

工夫次第で取得できる項目

これらの項目は、企業の事業計画や内部体制の調整が必要です。

賃上げの事業計画の策定、従業員への表明、事業計画の達成:給与支給総額を一定割合以上増加させるという具体的な目標設定が必要です。企業の財務状況や今後の事業計画を考慮し、現実的な目標を立てることが求められます。賃上げは従業員のモチベーション向上にもつながるため、補助金以外のメリットも考慮すると取り組む価値は高いです。ただし、実行できなかった場合、補助金返還の可能性があるため要注意です。

健康経営優良法人2025の認定取得:経済産業省が推進する「健康経営優良法人」の認定を受けている場合に加点されます。認定を受けるには、従業員の健康診断の実施、メンタルヘルス対策など、複数の要件を満たす必要がありますが、計画的に取り組めば認定取得は可能です。従業員の健康維持や生産性向上にもつながるため、補助金以外のメリットも大きいでしょう。
 ただし、「健康経営優良法人2025」の申請受付は令和6年10月に終了しているため、すでに「健康経営優良法人2025」の認定を受けている場合は加点対象となりますが、未認定の場合、IT導入補助金2025での加点適用は受けられません。
 なお、令和7年8月18日より「健康経営優良法人2026」の申請受付が始まっています。

くるみん・えるぼし認定取得:「えるぼし認定」(女性活躍推進企業)とは、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づいて一定基準を満たし、女性の活躍促進に関する状況などが優良である企業を認定する制度です。「くるみん認定」(子育てサポート企業)とは、次世代育成支援対策推進法に基づいて一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業を「子育てサポート企業」と認定する制度です。これらの認定は、育児支援や女性の活躍推進に関する具体的な取り組みが評価されるものであり、取得にはある程度の期間と社内体制の整備が必要です。

取得に専門的な知識や時間が必要な項目

これらの項目は、社外の関係機関との連携や、高度な事業計画の策定が求められます。

地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認取得:都道府県知事の同意を得る必要があります。これは、自社の事業計画が地域の成長にどう貢献するかを具体的に示し、計画に沿って行政と連携する必要があるため、時間と手間がかかります。地域に根差した事業を展開している企業にとっては大きな加点要素となりますが、一般的な企業がすぐに取得するのは難しい項目です。

地域未来牽引企業への選定および目標の提出:経済産業省が選定する「地域未来牽引企業」に選ばれている場合に加点されます。これは、地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域経済をリードする中核企業として認められる必要があり、選定されること自体が難易度の高い項目です。

成長加速マッチングサービスへの登録:「成長加速マッチングサービス」に会員登録を行い、挑戦課題を登録・掲載することで加点されます。このサービスは、企業の経営課題解決を目的としたもので、登録自体は可能ですが、単なる登録だけでなく、課題の質や具体性が問われる可能性があります。

まとめ:加点項目は「合格」への最短距離

 IT導入補助金の審査員は、単にITツールを導入したいという理由だけでなく、「このIT導入が、企業の成長と国の政策目標にどう貢献するのか」を見ています。

 今回ご紹介した加点項目は、まさに「国の政策に貢献する意欲」をアピールするための重要な要素です。

 また、これらの加点項目は、単に補助金を得るためだけでなく、企業の経営改善や社会的な信頼度向上にもつながるものが多くあります。採択率が低下する現状では、一つでも多くの加点項目を意識的に取り入れ、計画に盛り込むことが、補助金獲得の重要な戦略となります。

 加点項目は、単なる「おまけ」ではなく、国の政策方向性や社会課題への対応姿勢を示す重要な要素です。これらを適切に取り入れることは、補助金獲得の確率を高めるだけでなく、企業の経営基盤を強化し、社会的な信頼性を向上させることにもつながります。

 ご自身の事業がどの加点項目に該当するか、どのように計画に組み込むべきかお悩みであれば、ぜひ一度弊社にご相談ください。私たちは、厳しい審査を突破するための戦略を共に考え、皆さまのIT導入を成功に導くお手伝いをいたします。

 なお、最後に申し添えておきたいことがあります。加点項目は確かに採択率を上げる上で重要ですが、採択を決定づけるのは、事業計画全体の説得力と実現可能性です。加点項目は採択率を高める強力な武器ですが、それだけで合格できるわけではありません。採択の本質は「事業計画の説得力」と「ITツール導入効果の具体性」にあります。審査で最も重視されるのは基本的な事業計画の完成度です。これらについては下記の記事をご参照ください。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする