【考察】IT導入補助金2025の採択率はなぜ下がってきたのか?採択率アップのポイントは?

かつて70%台の採択率は41%まで低下

 2025年7月24日、IT導入補助金2025の第2次公募の採択の結果が発表になりました。通常枠の採択率は41.1%でした。2025年6月18日発表の第1次公募の通常枠の採択率は50.7%ですから、さらに10%近くのダウンになります。

 これは、2024年、2023年のIT導入補助金採択率が通常枠はおおむね70%台であったことを考えると(下記表参照)、大幅な採択率ダウンです。2025年は、審査基準が厳格化しており、申請通過のハードルは確実に上がっていると言えるでしょう。

 以下で、採択率低下の背景と採択されるためのポイントについてご説明したいと思います。

採択率低下の背景

 今回の第1次公募、第2次公募の採択率が例年よりも低下した主な要因として、弊社では、「審査基準の厳格化」「前年のIT導入補助金2024の最終公募で採択されなかった事業者の再申請が多い」「過去に採択された実績がある企業への減点措置」の3つがあると考えています。

審査基準の厳格化

 IT導入補助金の審査は、より本質的なデジタル化支援を目指し、近年、特に2024年から厳しくなっており、2025年もその傾向が続くとされています。これは主に、過去の不正受給問題や、限られた予算をより効果的に活用しようとする国の意図によるものです。安易な申請や不正行為は厳しく排除されるため、事業計画の具体性と実現可能性をいかに説得力を持って示すかが、採択されるための重要なポイントとなります。これについては後述いたします。

前年のIT導入補助金2024の最終公募で採択されなかった事業者の再申請が多い

 前年のIT導入補助金2024の最終公募(第7次公募)の採択率は、通常枠で26.0%と非常に低い結果でした(上表参照)。これは、この最終公募がそもそも「追加予算」という位置付けでなされたものであり、予算が非常に限られていたせいではないかと推測しています。

 例年、1次公募はそれ以降の公募回に比べて少なめの申請数でスタートしていましたが、前年最終公募の採択が非常に少なかった影響で、IT導入補助金2025の通常枠では前年の1次公募と比較して申請数が大幅に増加し2倍近くに、2次公募も前年と比較して約1.5倍と大幅に申請数が増加しています。申請数の増加によって採択基準に何らかの変更がなされた可能性があります。この点については、3次公募以降の採択率も注視していかねばなりません。

過去に採択された実績のある企業への減点措置

 IT導入補助金2025では、「減点項目」に、『IT導入補助金2023又はIT導入補助金2024において交付決定を受けたソフトウェアのプロセスと、今回導入するソフトウェアが有するプロセスが重複する事業者。※ なお、プロセスが完全に一致する場合、不採択とする。』とあります。

 IT導入補助金は他の補助金に比べて、同じ企業が何度も申請する傾向があります。そのため、上記の例のように過去に採択された企業が今回も申請する場合、減点措置によって、採択のハードルがやや高くなっていることが考えられます。「プロセスが完全に一致する場合は、不採択とする。」とも明記されています。これも採択率の低下につながった一因と言えるのではないでしょうか。

採択率アップのポイント

明確な事業計画を作成する

 これは今更ながらの当たり前のことなのですが、基本は、「補助金の目的をよく理解し、それに合った取り組みを計画している」ことが伝わるような事業計画書にすることで、審査員から「計画性と実行力がある」という評価を得やすくなります。その核なるのが、論理的で分かりやすく・数値で見せる事業計画書を作成することです。現状分析→課題→改善効果→将来像を、第三者が見ても理解できる論理構造にして説明することが非常に重要です。特に、2025年第1次公募、第2次公募のいずれも、2024年と比べて採択率が大きく低下しており、以前にも増して事業計画の内容が重視される傾向にあります。明確な事業計画を作成する上でのポイントは、以下の5つに集約されます。

現状分析の徹底と課題の明確化

・自社の業務における具体的な課題点を詳細に分析し、それがどのような経営上の問題につながっているかを具体的に記述します(例:「手作業による入力ミスが月平均5件発生し、顧客クレームにつながっている」)。そして今回の申請が、単なるITツールの導入ではなく、自社の経営課題を解決するための手段であることを明確にします。

ITツールと経営課題の関連性の明確化

・導入するITツールが、上記で明確化した自社の経営課題をどのように解決し、生産性向上に寄与するのかを具体的に説明します。例えば、在庫の多さに課題があるなら、在庫削減にどのように役立つかを具体的に記載します。

具体的かつ定量的な目標設定

・「不良率を削減する」といった抽象的な表現ではなく、「不良率を30%削減する」といった明確な数値目標を設定し、その達成方法と根拠を明示します。類似事例や試算に基づいた根拠を示すことで信頼性が高まります。

実施計画の具体性

・ITツールの導入スケジュールや実施体制を詳細に記述し、確実に実行できることをアピールします。責任者や担当者の役割分担、社内での推進体制まで具体的に示すことで、信頼性が高まります。

単なる導入ではなく「成長戦略」の一部とする

・中小企業でも“攻めのIT投資”であることを強調し、今回のIT導入が、将来的な利益改善や売上拡大につながることを示します。

加点項目を最大限に活用する

 IT導入補助金2025には多くの加点項目が設定されており、これらを獲得することが採択率アップの最も重要なポイントになります。通常枠の加点項目は次の11項目あります。ここでは各項目の詳細は省略しますが、自社で取れるものがないか改めて検討され、できるだけ多くの加点項目を獲得することが採択への近道になります。

 なお、11番目の項目の「成長加速マッチングサービス」は、2025年6月17日付けで、IT導入補助金2025の公募要領の改訂があり、加点項目として追加されたものです。始まったばかりの新しいサービスです。下記サイトで自社の情報を登録し、課題を登録しいずれかの支援機関に公開することで加点を受けることができます。
https://mirasapo-connect.go.jp/corporation

1) 地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画(IT導入補助金の申請受付開始日が当該計画の実施期間内であるものに限る。)の承認を取得していること。
2) 交付申請時点で地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出していること。
3) 導入するITツールとしてクラウド製品を選定していること。
4) 導入するITツールとして「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を選定していること。
5) 導入するITツールとしてインボイス制度対応製品を選定していること。
6) 補助金申請額150万円未満の申請者であって、事業計画期間において、以下の要件を全て満たす3年の事業計画を策定し、実行していること。
・ 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること。
・ 事業計画期間において、給与支給総額の年平均成長率を1.5パーセント以上とすること。
※ なお、上記に加え、事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にした場合、更なる加点を行う。
7) 補助金申請額150万円以上の申請者であって、事業計画において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にしていること。
8) 中小機構が運営するデジタル化支援ポータルサイト「デジwith」における「IT戦略ナビwith」を交付申請前に行っていること。(「IT戦略ナビwith」実施時に、本事業の申請に用いたGビズIDプライムを入力し、実施結果(IT戦略マップ)が表示されたものを交付申請時に添付すること。)
9) 令和6年度に「健康経営優良法人2025」に認定された事業者であること。
10) 交付申請時点で、以下のいずれかに該当すること。
・ 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定(えるぼし1段階目~3段階目又はプラチナえるぼしのいずれかの認定)を受けている者
・ 次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく認定(くるみん、トライくるみん又はプラチナくるみんのいずれかの認定。)を受けた者
11) 交付申請締切日時点において、中小企業庁「成長加速マッチングサービス」で会員登録を行い、挑戦課題を登録していること。
※登録されている課題のステータスが「掲載中」となっている課題を確認できた場合のみ加点を行う。

まとめ:昨年同様にという考えは捨てて改めて検討すべし

 2025年になってIT導入補助金の採択率が厳しくなり、今までの感覚で申請してまさかの不採択となってしまい驚かれた企業様が多いのではないでしょうか。補助金の制度・基準は毎年少しずつ変わっていきます。ついては、「昨年同様に」という考えは捨てて、改めて最新の公募要領を熟読されて、今年の要件に合っているかどうかを分析した上で、申請・再申請を検討していただければと思います。

 「IT導入補助金に興味はあるけれど、手続きが複雑そう…」 そうお感じでしたら、ぜひ弊社にご相談ください。IT導入補助金支援事業者である弊社が、申請から導入、その後の運用まで一貫してサポートいたします。補助金を最大限に活用し、貴社の成長を加速させましょう。

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