メルマガ「DXナビゲーション」バックナンバー:第15号 「2025年の崖」を乗り越えるためには生産管理システムが必要不可欠
2024年最終号のメルマガ、改めて生産管理の重要性について
本年5月より始めたメールマガジンも、おかげさまで今号で第15号を迎えることができました。毎回ご愛読いただき、誠にありがとうございます。中小製造業においてもDXの推進が叫ばれている中、生産管理システムの導入を検討されている企業も多いこととと思います。しかし一方では、「生産管理システムって、結局、何のために導入するの?」「生産管理システムを導入すると何が変わるの?」といった疑問を抱え、なかなか導入に踏み切れない企業も多いのではないかと察します。ついては、今号は本年最後のメールマガジンとして、改めて生産管理システムの重要性についてご説明させていただきたいと思います。
手作業の生産管理では管理レベルは向上しない
昨今のDX推進の追い風を受けて、大手企業の工場では、生産管理システムの導入が当たり前になっているものの、中小企業ではまだ普及度が低いのが現状です。では、実際はどれくらいの中小企業が生産管理システムを導入しているのでしょうか。公的な統計データは見当たらないのですが、弊社では現在、従業員数10〜99人規模の中小板金製造業のうち30%程度の企業でしか生産管理システムは導入されていないと考えています。残る70%の企業では、いまだに人手と紙を介して情報・業務を管理し、生産計画は経験と勘とコツで行うなど、人に依存した管理になっているのが現状だと言わざるを得ません。仮にシステムと呼ばれるものを利用しているとしても受発注の際の伝票出力のためという程度ではないでしょうか。
このように多くの中小企業では生産管理のシステム化が遅れており、人による生産管理が行われている現状では、高度な管理はできません。今後機械の性能がさらに上がり、誰でも同じようなモノづくりができるようになると、他社との差別化のためにはいかに効率的にモノづくりを行うかの管理力が非常に重要な要素になると考えられます。しかし、人に依存した管理を行なっているのでは、今後の勝ち残りは非常に難しいと言わざるを得ません。特に、中小メーカーの多い板金・機械加工・プレスなどの金属加工の現場では、多品種少量化が進んでいる上に、急な親会社からの注文の変更やキャンセルが多く、生産計画が立てづらいことが課題となっています。また、特急品への対応など短納期要求もいっそう高まっており、よりタイトでフレキシブルな管理が求められています。まさに、管理力でそうした課題を乗り切らなければならない時代になったと言うことができます。人依存の生産管理では、変化に対応できず、対応が後手に回ってしまいます。多くの工場では、効率が悪く、管理のサイクルが長くなってしまい、無駄な時間・コストがかかる状況となります。ここに、生産管理をシステム化し、生産性を上げる余地が多大にあるのです。
生産管理システムを導入する課題と目的を明確に
生産管理システムを導入する究極の目的は、「品質の良いものを(Quality)、原価を抑えて(Cost)、短納期でつくる(Delivery)こと」、即ち、QCDの最適化を図り、自社製品の競争力を高めることです。
そして、そのために解決しなければならない課題は、各企業において様々ですが、次のようなことが挙げられます。
・情報の一元化ができていない
・急な変更や受注による現場の混乱
・製品の原価を把握できていない
・在庫の不足や欠品、過剰在庫が起こる
・同一内容の不良が発生する
自社がなぜ生産管理システムを導入したいと考えているのか、上記の課題の何を解決したいのか(もちろん一つではなく複数の課題がある方が普通です)、その目的を明確にすることが重要です。
生産管理システムは導入することがゴールではなく、スタートです。これから先、どのようなものづくりをしたいのか、その理想像を描くことです。そして、全社一丸となってそれに近づけていくために、生産管理システムを活用してどうしたいのか、経営者が強い決意を持って従業員に方針を示し臨むことが必要になります。
生産管理システム導入のメリットは
生産管理システムを導入することの一番のメリットは、業務効率化を実現できることです。他にも、生産計画をきっちりと立てられる、進捗管理が可能になる、原価管理が可能になる、利益率が改善される、などが挙げられます。生産管理システムを導入することによって、経営層が生産管理業務の状況をひと目で把握し、迅速な経営施策を打つことができるというメリットもあります。
人に依存した生産管理を改め、システムで生産管理が回るように
生産管理を手掛けていても実際は工程を管理する人が頭の中で行なっていたり、表計算ソフトで管理している企業が多いのではないでしょうか。「見える化」対策として、他にも企業ごとに様々な創意工夫がなされていることでしょうが、果たしてベストプラクティスになっているでしょうか。「井の中の蛙」になっていませんか。今一度、自社の管理の仕組みを見直してみましょう。
複雑な生産管理を緻密かつ効果的に行なうためには、システムを用いて課題を解決していかなければなりません。仕事を標準化し、システム化することで、効率化し、熟練者でなくても管理ができるようにしなければなりません。こうした意味で、生産管理システムの導入は、中小製造業のDXの一丁目一番地に挙げられるのです。
まとめ
Zenken株式会社が、2024年9月に中小企業経営者を対象に実施したアンケート調査では、「2025年の崖」を「知らない」または「詳しく知らない」と回答した人が8割に上りました。「2025年の崖」とは、老朽化した基幹システムの更新時期と技術者不足が重なる危機的状況を指します。対応が遅れると企業成長が停滞し、国全体の生産性や競争力の低下を招く恐れがあります。
もともと日本企業は欧米企業に比べてDXが遅れているとされ、これ以上の遅れは致命的となりかねません。「DX or Die」(DXができなければ死ぬしかない)、「Change or Die」(変わらなければ死ぬしかない)、「Fast eats Slow」(早いものが遅いものに勝つ)というビジネス警句に代表されるように、今後継続して競争力を維持するためには、デジタル技術を活用し、データをもとに素早く経営判断や意思決定を行う「データドリブン経営」に舵を切らねばなりません。手作業の生産管理・表計算生産管理では管理レベルを上げることはできません。そのためには、他企業より一歩でも早くDXに着手することが必要であり、その最初のステップとして生産管理システムの導入、あるいは導入したものの効果を上げていないシステムのリプレースが必要不可欠となります。「2025年の崖」を間近に控えるいま、ぜひ実行してください。
本号をもちまして今年のメールマガジンの配信は最終となります。ご愛読いただき、どうもありがとうございました。来年も皆さまがDXを推進する上でお役に立てる情報を配信して参ります。引き続きご愛読いただきますようお願い申し上げます。
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